個人サイトって自営業と似ている。

 今更ながらウェブサイト論を書くというのは遅きに失している気がして非常に恥ずかしいのですが、メモがわりにフジモリが考えるサイト論をつらつら書いていこうかと思います。もちろんこのサイト論はフジモリの私論(試論)ですので、良いご意見あれば即座にブラッシュアップします。
(以下、長々と)
0)はじめに
 なぜこの記事を書こうと思ったかというと、直接のきっかけはアイヨシの記事「書評ブロガーの戯言:面白さと流行度を等号でつなぐのはやめて欲しい - 三軒茶屋 別館」を読んだからです。元記事(アイヨシが引用した親記事)そのものを読むと突っ込みどころが多々ありますが、まあわかりやすく書いたのだろうと解釈し深くコメントするのは避けようと思います。
 今回はまず、ウェブサイト(以下、サイトと略します)に対するフジモリの考えを述べてみたいと思います。
 わかりやすさを優先していますので一部乱暴な例え方をしているところもありますが、ご容赦ください。
1)個人サイトって自営業と似ている
 フジモリが考えるに、
 お店=サイト
 お金=時間・意思(思考)
 売れる・儲ける=アクセス数を稼ぐ、多数のコメントをもらう(反響がある)
 と解釈しています。
 立ち上げから経営まで、お店とサイトは非常に似通っています。
2)サイトの立ち上げ
 起業するときには、とりあえず自分の店を何屋にするのか考えるかと思います。
 儲けたい(大量にアクセスを稼ぐ・反響を得る)のか?
 趣味の店にするのか?
 目的によって店で取り扱う商品も違うと思います。儲ける店を目指すならパイが大きい市場を狙うのが近道かもしれませんが、当然ながら既に大手がいますので新規参入として市場に切り込むには他のサイトとの差別化を図るなど様々な工夫が必要でしょう。趣味の店にするのでしたら売上はあまり期待せず、常連たちとまったりとした時間を過ごす喫茶店のように採算度外視にするでしょう(赤字にならない程度に)。
 喫茶店を立ち上げたのに隣のゼネコンを見て「儲かってるなぁ。うらやましいなぁ」と思うのは筋違いかなぁ、と思います。
 お店を立ち上げるときには資金が必要です。商品の仕入れとは「情報収集、ネタ集め」であり、また「コンテンツの作成」であります。たとえば書評サイトであったら「これまでの経験・知識を元に書評を書く」ことです。オープンしたお店の前に商品が少なかったらお客さんが来ないように、店頭にある程度のコンテンツをそろえておくことは必要かと思います。
3)サイトの宣伝
 いくら良い商品を並べても、その存在を全く知られていなければそのお店には全く人が来ないでしょう。
 検索サイト経由で訪問する人(=裏通りを歩いてぶらっとその店を見つけて立ち寄る人)もいるかもしれませんが、その場合でも店の前にしっかり看板を掲げていないと素通りされてしまいます。フジモリたちのサイト「三軒茶屋」も、例えば検索サイトで「森博嗣 書評」と入力すると今のところ一番最初に表示されますが、これは管理人たけいのアイデアによるものです。
 普通お店をオープンした際は、近所に広告を配ったり地方紙に広告を載せたりするかと思います。また近所づきあいを厚くして常連を増やすという泥臭い努力も必要かと思います。まずは自分のお店を知ってもらうこと、というのはけっこう重要なポイントかと考えています。
4)サイトの売上
 お店が軌道にのってきた(適度なアクセス、適度な読者との交流)そのあとは、お店を運営していかなくてはいけません。
 ここが一番難しいところで、日々サイトを運用していくためには
 仕入れ=情報収集
 加工=コンテンツ作成
 接客=コメント回答など
 と費用(=時間・意思)が発生します。例えば、読書感想をサイトにアップするには、本を読む⇒感想を書く⇒アップする⇒コメント回答するという労力が発生します。これがいわゆる「原価」です。一方「売上」は「読者の訪問数や反響」ですので、「労力」に対し「反応」が薄いと「赤字」になってしまうわけです。
 とはいうものの「反応」はデジタルな数字が出るわけではありませんので、一週間かけた大作が100HITしかなくても「100人も来てくれた」とポジティブにとれば採算が合うわけです。これがウェブサイトと実際のお店の最大の違いだと思います。
 一方、読者の財布(時間)も無限ではありません。数少ない収入を効率よく使うために「安価(=読むのに時間がかからない)」なコンテンツを優先する場合もありますし、高価でも価値あるコンテンツを優先する場合もあります。薄利多売(時間もかけず読む側もさっと読めるコンテンツを多数取り揃える)にするか高付加価値の商売にするかと言うのも一種の方向性だと思います。
5)サイトの経営
 原価に対し売上が少なかったら赤字になります。
 赤字が続けば残念ながら「閉店(=サイト閉鎖)」ということもあるわけですが、実際は経営者の資金(時間・モチベーション)が続く限り続けられるかと思います。
 赤字を解消するには2つの考え方があり、「原価を下げる」「売上を上げる」ことが考えられます。
 原価を減らす、つまりコンテンツ作成にかける時間をいかに効率よくするかというのが「コスト削減」の考え方です。「ウェブログ」というツールは上記の「感想を書く⇒アップする⇒コメント回答する」の時間を従来の方法から短縮するものであり、コスト削減に役立っています。ちなみに「三軒茶屋 本館」は旧来のやり方でやっていますので、アップまで「原稿のhtml化⇒ホームページビルダーで加工⇒サーバにアップ」と非常に時間がかかります。*1
 一方、「売上を上げる」ですが、これには様々な方法があります。このへんはビジネス書を1冊読めばよくわかるので割愛しますが、ぱっと思いつくのは、
 (1)売れ筋商品を取り扱う
 (2)宣伝する
 (3)ニッチな市場を狙う
 (4)商品を売れるよう改良する
 が挙げられます。
 (1)売れ筋商品を取り扱う、ですが、やはり興味を持つ読者が多ければ多いほど一般的には「売れる」わけで、メジャーな話題や旬の話題(例えば今なら「らき☆すた」など)で多くの読者を引き込む方法があります。
 (2)宣伝する、ですが、以前は自発的に宣伝するというのが有効でしたがく、現在ではニュースサイトさんに取り上げてもらうのが一番手っ取り早いです。ニュースサイトさんごとに傾向もあるでしょうから、取り上げられた記事を読んで「どうすれば取り上げてもらえるか」ということについて思索しても良いかもしれません。
 (3)ニッチな市場を狙う、ですが、例えば特定ジャンル(ひとつのマンガなど)に特化したり、他の人が取り上げていないようなジャンルの記事を書くなど、競合するサイトが少ない話題を取り上げるというのもひとつの手です。(ブルーオーシャン戦略とも言います)
 (4)商品を売れるよう改良する、ですが、まあまずこの考え方ありきというのは当然のことかと思います。同じ内容でも安価(=読者が読むのにかける時間が少ない)のであればより売れるでしょう。読みやすいように見出しを整える、文章力を上げる、要点をしっかりおさえるなど、コンテンツの内容は同じでも出来ることは多々あると思います。まあ当たり前ですが「面白い記事を書く」というのはサイトを流行らせる(売れる)ためのひとつの手法ですが、あくまで数多くの方法のひとつでしかないのではないかと思っています。
 日々サイトの更新を続けていくと、ネタ集め⇒コンテンツ作成⇒アップの作業に時間がかかるため自転車操業になってしまいがちです。ときには立ち止まって収入と支出の見直しを図ることも重要ではないかと思います。
6)おわりに
 好き勝手書きましたが、読まれる方がどのようなサイトを持っているかで意見が異なると思います。ニュースサイト、ネタサイト、グルメサイトなどそれぞれのお店のジャンルで経営方法も異なるとは思いますが、概念的なところでは共通しているのではないか、という思いはあります。
 自身のサイトについて「こうなりたい」というビジョンを持っていらっしゃるなら、夏休みの読書にビジネス書を読むのも一興かもしれません。
 長々と書いてまいりましたが、ここまでお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。(ぺこり)

はじめよう!1人でできる小さなお店 (DO BOOKS)

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*1:余談ですが、以前紹介した「バッタ屋サイト」はコンテンツ作成を自動化することで原価を極限まで下げています。http://d.hatena.ne.jp/sangencyaya/20070723/1185185572