−行きつけの喫茶店はありますか?− 矢崎存美『ぶたぶたと秘密のアップルパイ』

ぶたぶたと秘密のアップルパイ (光文社文庫)

ぶたぶたと秘密のアップルパイ (光文社文庫)

 矢崎存美「ぶたぶた」シリーズの最新作です。
 このシリーズをご存じない方向けにご説明しますと、「ぶたぶた」シリーズとはピンクのふかふかな体、ビーズの目をした、ぶたのぬいぐるみ「ぶたぶた」と、「彼」に出逢った人たちが繰り広げるハートフルな物語のことです。
 ときにはベビーシッター、ときにはコックさん、はたまた刑事になったりと、作品によって様々な職業になる神出鬼没な「ぶたぶた」。今回は、喫茶店のマスターです。
 「秘密をマスターに話す」ことが入会の条件という会員制喫茶店。「ある秘密」を抱えていたイラストレーターがその店に入ると、そこにはぶたのぬいぐるみがいて・・・。というお話。
 今作もいつもの「ぶたぶた」節が全開で、読み終わったあと心が「ほっこり」してきます。舞台が変わろうが出版社が変わろうが(笑)、「お約束」ともいえる物語を紡ぎ続けることは凄いことだと思います。ある意味究極の「キャラ小説」なのかもしれません。
 フジモリは職業柄いろいろな喫茶店に寄る機会が多いのですが、「静か」「美味しいコーヒー」「長居できる」「店員との適度な距離感」など、結構お店によって異なります。そんな中、「居心地のよい」喫茶店を見つけて行きつけにするのが結構趣味だったりします。*1
 作中で描写される喫茶店は、作者矢崎存美の筆致とあいまって程よい「居心地のよさ」が醸し出されています。そして出てくるメニューの美味しそうなここといったら!
 「ぶたぶた」シリーズはどの本から読んでもOKですので、この本片手にお気に入りの喫茶店でまったりと読書、というのも乙なものかもしれません。
【参考】
●矢崎存美のぶたぶた日記
●三軒茶屋 本館 アイヨシの書評 矢崎存美『ぶたぶた』
●三軒茶屋 本館 フジモリの書評 矢崎存美『ぶたぶた』

*1:余談ですが、フジモリの持論として、「喫茶店では「美味しいコーヒー」と「快適な時間」にお金を支払う」ものだと思ってます