大事なのはフランス料理の材料じゃない、その精神です。
- 作者: 雁屋哲,花咲アキラ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1985/05
- メディア: コミック
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大事なのはフランス料理の材料じゃない、その精神です。
(『美味しんぼ』2巻p101より)
というわけです。さらに言えば、単にフランスの材料を使って料理をしただけではフランス料理にはならない、というわけです。「鼻持ちならないグルメ野郎が!」と思いつつも(笑)、しかしながら言いたいことはよく分かります。というのも、この本を読んで同じような感想を抱いたからです。
- 作者: 逢空万太,狐印
- 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
- 発売日: 2009/04/15
- メディア: 文庫
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もちろん、神話体系共有の”符丁”というべき固有アイテムを、さりげなく作中に紛れ込ませる”遊び”は、それこそ開祖ラヴクラフト以来の良き伝統ではあります。けれども、それはあくまでもさりげなく、作品の本筋から離れたところでなされるからこそ”遊び”であり”粋”なのであって、決して
はじめにアイテムありき ではないのです。安直に既成のアイテムに寄りかかった作品、読者の側に”共同幻想”への加担を無理強いするような作品は、クトゥルー神話の滑稽なパロディにはなりえても、コズミック・ホラーを体現する神話作品そのものには到底なりえないのです。
あれほど積極的に、師ラヴクラフトが創造した神話アイテムを自作に導入しプロパガンダにつとめたダーレスが、神話作品執筆を志す若き日のラムジー・キャンベルに対して、安易に既成の神話アイテムに頼らず、オリジナルな神話世界を目指すように、とアドバイスした逸話を思い出してください。
(『クトゥルー神話事典(第三版)』p34より)
というわけで、本書を可能な限り好意的に評価するとしても”滑稽なパロディ”が限度ですが、正直そんなの褒め過ぎで、他のパロディ作品に対して申し訳が立たないです。あとがきでは『デモンベイン』も引き合いに出されていますが、『デモンベイン』は宇宙的恐怖というものを巨大ロボ物に特有の圧倒的な熱量によって描き出そうとしています。その意味でコズミック・ホラーとしては正統派だといえますし、そもそも本書と比べることすら失礼に当たるくらいに差があります。宇宙的恐怖と狂気がクトゥルー神話の基本です。パロディならパロディで構いませんが、クトゥルー神話のそうした精神への理解がまったく見られないパロディには心底がっかりで残念です。
……まあ、人の嗜好は人それぞれですから何を読んで何を面白がろうが勝手ではあるのですが、本書をクトゥルー神話に連なる作品として、たいした考えもなしに「面白い」と書いてるようなブログなどを読むとイライラしてどうしようもなかったので、お見苦しいとは思いつつもこうしてストレス発散記事を書かせていただきましたとさ。
【関連】『スレイヤーズ!』とクトゥルフ神話 - 三軒茶屋 別館
- 作者: 東雅夫
- 出版社/メーカー: 学習研究社
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