茂木大輔『オーケストラは素敵だ』中公文庫

のだめカンタービレ』音楽監修でお馴染みのオーボエ奏者・茂木大輔の音楽エッセイです。
オーケストラへの入団テストである「オーディション」や演奏前の注意点や心構え、コンサートのエピソードなどを、それこそ「オーボエの演奏のように」洒脱に、それでいて精緻に語っています。
異国の地でのオーディション、入団後のコンサート遍歴など、普段知ることの無いオーケストラの舞台裏が見えてきますし、当たり前のことながら、「素晴らしい演奏には絶え間ない努力」ということが身に沁みてわかります。

大きな花束が美しいのは、それを構成するひとつひとつの花が、たとえ目立たなくとも手抜きなく美しいからにほかならない。
いわば、ひとりひとりの丹精こめた音ばかり集めて作るオーケストラの音は、無限に贅沢な「音の花束」なのである。(P179)

とあるように、普段は「集合体」としてしか意識しないオーケストラも、当然ながら一人一人にドラマがあり、「個」の融合で紡ぎだされている、ということに気付かされます。
のだめカンタービレ』フランス編で千秋が現地のオケを指導したり、オーディションを行なったりしていますが、そのリアリティは実際に海外のオケを経験している茂木大輔が書く本書を読めば「なるほどなぁ」と唸らされることでしょう。
『オーケストラ楽器別人間学』もそうですが、文章力もあり、また一話一話が短いので非常に読みやすいです。
クラシックに興味のある方、『のだめカンタービレ』の世界を覗いてみたい方などは読んで損は無いとオススメできる一冊です。
【参考】茂木大輔『オーケストラ楽器別人間学』新潮文庫 - 三軒茶屋 別館