茂木大輔『オーケストラ楽器別人間学』新潮文庫

オーケストラ楽器別人間学 (新潮文庫)

オーケストラ楽器別人間学 (新潮文庫)

のだめカンタービレ』音楽監修でもお馴染みのオーボエ奏者、茂木大輔によるエッセイです。本書では、オーケストラの奏者のタイプを各楽器ごとに血液型性格診断のように一刀両断、分類しています。
まあ血液型診断は話のネタ程度のレベルであり、本気で信じている方は少ないかと思います。以下のサイトでもその辺が巧くネタになっています。
【参考】senrigan.net
しかしながらオーケストラの楽器というのは選択の過程で性格が出るものですし(目立ちたがり屋がトランペット、など)、楽器を演奏しているうちに楽器の役割に合った性格が形成される(低音で他のパートをサポートするファゴットは縁の下の力持ち、など)といった面も否定できません。そういったオーケストラでの各楽器の「キャラ」を、ユーモアを交え紹介しているのがこの本です。
ややネタバレになりますが、目次にある各パートの特長を引用してみました。
フルート  :冷たさも軽みもそなえた貴族的エリート
オーボエ  :ストレスに苦しみ、くよくよと細かい?
クラリネット:複雑さをひめた万能選手
ファゴット :愛すべき正義派
サクソフォン:一点こだわり型ナルシスト
ホルン   :忍耐強い寡黙の人
トランペット:単純明快、やる気満々のエース
トロンボーン:あけっぴろげな酒豪、いつも上機嫌
テューバ  :底辺を支える内向派
打楽器   :いたずら好きでクールな点的思考者
ヴァイオリン:陰影に富んだユニバーサルの人
ヴィオラ  :しぶく、しぶとく「待ち」に強い
チェロ   :包容力とバランス感覚にすぐれた、ゆらぎのない人間性
コントラバス:泰然自若、唯我独尊
ハープ   :夢見がちな深窓の令嬢

・・・どうでしょうか。当たるも八卦、当たらぬも八卦と言いますが、楽器経験者なら身に覚えがあるのではないでしょうか。*1
実際、著者の言うとおり、性格が楽器を決める先天的な要素と、楽器によって性格が変わる後天的な要素により、「楽器によりキャラ(性格)が異なる」という現象は否定できないと思います。以前、とある指揮者の方と飲んだときにもこの本の話題になりましたが、その際も「あるある」と笑いながら仰ってました。
この本では各パートの性格判断の後、「デートでのふるまい」だとか「飲み会でのふるまい」などシチュエーション別の行動予測や、芸能人がオーケストラに入ったらどのパートか、なども語っており、「あるある」「なるほど」と笑いながら楽しめました。
しかしながらこの本、各パートの性格判断を笑って読むうちに、実はオーケストラの楽器や構成そのものについて学べてしまう、という一面も持っています。オーケストラの入門書として楽しみながら学べる、オーケストラ初心者なら読んで損はない一冊でもあり、経験者は経験者で「あるある」要素を満喫できる一冊だと思いました。
さて、あなたに相応しい楽器は何だったでしょうか?

*1:ちなみにフジモリ・たけいは大当たり。アイヨシも、うーん、一部当たってるかなぁ(笑)。もちろん「いやいや違うだろ」という人もいますよ、念のため。