ハチワンを読んで将棋を指そうと思った人に送る将棋入門

ハチワンダイバー 1 (ヤングジャンプコミックス)

ハチワンダイバー 1 (ヤングジャンプコミックス)

 『ハチワンダイバー』は将棋というマニアックな題材を扱っているにもかかわらずドラマ化されたりもした人気漫画ですが、それだけに、将棋をよく知らないまま楽しんでいる方も多いと思われます。そんなわけで、今回は『ハチワン』を読んで将棋に興味を持った方向けのオススメサイトをいくつか紹介してみたいと思います。
(以下、長々と。)

ルールを覚えよう

初段NAVI(将棋) 〜インターネット将棋道場で誰でも楽しく棋力初段へナビゲート〜
 上記サイト内のルールを覚えようのコーナーは、駒の動かし方やルールを図入りで簡潔にまとめてくれています*1。オススメです。

将棋を指してみよう

 駒の動かし方と最低限のルールを覚えたら、まずは指してみましょう。
ハム将棋
 将棋のフリーソフトといえば、何といってもボナンザが有名ですが、こいつは強すぎて話になりません(笑)。初心者でしたら、とりあえずこのハム将棋を倒すのを目標にされてはいかがでしょうか。FLASHゲームなのでダウンロードの必要すらないのも高ポイントです*2。ただし、このハム将棋は必ず△3二金という定跡外れの手を指してくるので、せっかく勝てるようになっても他のソフトや対人戦にはほとんど役に立ちませんけどね(笑)。ただ、適度に弱くて、それでいてそこそこの手を指してくるので初心者には良い相手だと思います*3
 とはいえ、このハムだって初心者にはかなりのハードルだと思います。やはり具体的な戦法を覚えなければ勝つのは難しいでしょう。
(なお、ハム将棋とボナンザの中間のフリーソフトとして、個人的にはK-Shogiの初級(これでもかなり強いです)がオススメです。指し手の筋もそれなりですし、何より画面(盤面)が綺麗で分かりやすいのが嬉しいです。)

戦法を覚えよう

 ということで、具体的な指し方・戦法です。将棋は漠然と指すと手が広すぎて難しいですから得意戦法を持つことで指し方を覚えていくのが勝利への近道でもあります。
棒銀
http://home.att.ne.jp/aqua/DAIJIN/joseki/index.html
 まずは何といっても棒銀です。初心者からプロまで棒銀はなくてはならない戦法です。なぜなら、飛車先から銀を進出させるというコンセプト自体が非常に応用の利くものだからです。棒銀と一言で言っても、端を突破する棒銀、相手の動きを牽制する棒銀、対振り飛車戦法としての棒銀と様々な種類がありますが、まずは原始棒銀です。これを知ってるだけで初心者同士なら百戦百勝です。
カニカニ
特別編・カニカニ銀(関西将棋会館)
非定跡党カニカニ銀*4
 単行本8巻のオマケ漫画で紹介されている「カニカニ銀」は児玉孝一七段創案の戦法ですが、シンプルな駒組みから破壊力抜群の中央突破が魅力の戦法です。「無敵囲い」の進化形として初心者には強くオススメしたい戦法です。
●雁木
将棋戦法研究所雁木囲い・雁木戦法の狙い
非定跡党雁木戦法
amidalaの雁木研究(雁木だけでどこまでやれるのかを追求した勇者のページです。)
 『ハチワン』といったら何といっても雁木でしょう。プロ将棋では滅多にお目にかかれないマイナー戦法であるにもかかわらずネット上での研究はとても充実しています。美しい駒組みと泥臭い指し回しとのアンバランスさが魅力なのかもしれませんね。
三間飛車(早石田)
非定跡党石田流三間飛車早石田
http://snow.freespace.jp/Rocky-and-Hopper/もうコワくない!早石田
http://f11.aaa.livedoor.jp/~uzway/index.html
 『ハチワン』の師匠のモデルであり将棋監修を担当している鈴木大介八段考案の新早石田流三間飛車は現代振り飛車の代表格でもありますから押さえておかなくてはいけません。……そのはずなのですが、雁木とは対照的にネットでの研究はあまり充実していません*5。まだまだ未知の部分の多い戦法です。

人と指してみよう

 いくら強いフリーソフトが手に入る時代になったとはいえ、将棋を指すのはやはり人との対局が一番です。幸いにも現代にはネット将棋という便利な対局の場があります。『ハチワン』7巻のようなネット対局は将棋ファンの間では日常的なものです。
将棋倶楽部24
 日本将棋連盟主催のインターネット道場です。レーティング方式なので、自分の腕にあった対戦相手を簡単に見つけることができます。他にもハンゲームYahoo!ゲームでも将棋はありますので、気楽に指してみてはいかがでしょうか。

将棋界について学んでみよう

 鬼将会の目的はプロ棋士を倒すことです。では、プロ棋士とはいったい何なのでしょうか? プロ棋士とは日本将棋連盟公式サイト)の正会員のことを指します*6。プロ棋士になるためには、養成機関である奨励会に入会して、その中での競争を勝ち抜かなくてはなりません。順調に昇級・昇段を重ねますと、最後の難関である「三段リーグ」に参加することになります。三段リーグは半年に1回行なわれまして成績上位2名が四段=プロ棋士となることができます(つまり、三段と四段との間には天地の開きがあるのです)。
 奨励会には20歳までに初段、26歳までに四段という年齢制限があります。年齢制限を超えると強制退会となります。菅田がプロの道を絶たれたのもこの年齢制限によるものです。勝敗がすべての競争はとても厳しいです。
 ちなみに、奨励会制度以外にプロになるための制度として、プロ編入制度(参考:Wikipedia)も用意されています。年齢制限を超えても実力ある者であればプロへの道を閉ざすべきではないという考えのもとに創設された制度です。この制度でもプロになる条件はかなり厳しいですが、実力本位を担保するためにも必要な制度だといえます。菅田がもしプロ棋士になるとすればこちらの制度を活用することになりますが、果たして菅田の運命は今後どうなるのでしょうか?



【関連】『ハチワンダイバー』単行本の当ブログでの解説 1巻 2巻 3巻 4巻 5巻 6巻 7巻 8巻 9巻 10巻 11巻 12巻 13巻 14巻 15巻 16巻 17巻 18巻 19巻 20巻 21巻 22巻 23巻 外伝


【オマケ】【ハム将棋】ハムを蹂躙するスレ
 スレタイどおり、上で紹介したハム将棋を蹂躙するための研究スレです。ここまでする必要はまったくありませんが(笑)、どんな手を使ってでもハムに勝ちたいという方にはオススメです。一昔前では考えられなかった将棋の楽しみ方ですが、案外こういうことから将棋が強くなるというのもあるのかもしれないなぁ、と思ったりしました。

*1:将棋とは先手番と後手番とが交互に駒を動かしていくゲームですから、まずは駒の動かし方を覚えなくてはいけません。そして、その目的は相手の玉を詰ますことです。従いまして”詰み”という概念を理解する必要があります。また、その他の細かいルールとして、二歩の禁止、行き場のない駒を打ってはいけない、不詰めの禁止、千日手といったものがあります。これらは基本中の基本ではあるのですが、当たり前過ぎて丁寧かつ分かりやすく説明してくれているサイトは実はほとんどありません。このサイトはそんな中にあってはかなりオススメではありますが、ネットの特性を活かした初心者向けの説明は、本来なら連盟がもっと積極的に取り組むべきだと思います。

*2:実際に指すだけでなく、駒の動かし方やルールの説明、基本的な指し方なども学ぶことができます。将棋ファンの間でも評価の高い良FLASHです。

*3:この、”弱くて”かつ”そこそこの手を指す”という条件を満たしているソフトというのがないのです。強いソフトは本当に容赦ありませんし、かといって弱いソフトもありますが、そういうのは本当に馬鹿みたいな手を指してくるのでこれもまた話になりません。コンピュータ将棋の第一目標は打倒プロですが、初心者向けのソフトの開発というのも大事なニーズだと思います。どなたか良いフリーソフトをご存知の方がいらっしゃいましたらご教示いただければ幸いです。

*4:非定跡党さんではカニカニ銀は振り飛車に分類されていますが、矢倉の出だしから急戦を仕掛けるわけですから居飛車に分類するのが妥当ではないかと思います。

*5:今回紹介したサイトも三間飛車もしくは従来の早石田(もしくは升田式石田流)がメインで、新早石田についての検討は薄いです。

*6:ただし狭義。広義では女流棋士もプロ棋士と呼ぶべき存在ですが、ここでは話が拡散してしまうのであえて触れないことにします。