乾くるみ『リピート』の解説が「Niceboat.」だった

リピート (文春文庫)

リピート (文春文庫)

 乾くるみ『リピート』読了しました。裏表紙にも書かれていますが、ケン・グリムウッド『リプレイ』+アガサ・クリスティそして誰もいなくなった』な物語で、「同じ時間を繰り返すチャンスを与えられた」主人公たちの苦悩と運命の狂う様が淡々と描かれていて楽しめました。
 小説そのものの感想はしっかりした内容のものが各地で書かれているので割愛しますが、一番驚いたのは解説の大森望です。『リピート』のような時間SFものを言及するのに『サマー/タイム/トラベラー』や『タイム・リープ あしたはきのう』、はたまた『ひぐらしのなく頃に』の名前を出したり、物語の筋を「School Days」を用いて説明したりと、なんか特定層狙い撃ちのような内容でした。*1

 ”リセットを可能にしたとたん、実人生もエロゲー化する”という皮肉をリアルに描いた本当はおそろしい青春小説だとも解釈できる。(p522)

 しかしながらこの解説には罠がありまして、「乾くるみ『リピート』と『イニシエーション・ラブ』のネタバレあり」なので、両作品を読んでおく必要があります。
 未読の人向けの解説でエロゲとかラノベの話題を出して新規ターゲットを取り込むならともかく、既読者向けにこういったネタを出すってどないやねんっ、と思わず突っ込んでしまいました。
 とはいうものの『リピート』『イニシエーション・ラブ』ともに良質の小説だと思います。解説も含めてオススメです。

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

*1:確かに、主人公が読者の想定外の動きをするところは「School Days」に似てるかも