『ワンダービット 3巻』(島本和彦/MF文庫)

 島本和彦がかつて『ログイン』で連載していた熱血SF短編集も本巻で最後です(最初にアスキー出版から刊行されたときは全4冊でした)。全体的に見て、2巻までの内容と比べるとSF的な面白さはトーンダウンしちゃってます。また、連載終了が決まってからこれまでの総集編的なものとして書かれたハルマゲドン3部作は、楽しいと言えば楽しいですが、はっちゃけ過ぎてファン以外は置いてけぼりじゃないかと思います。アリスのライブなんて知らねーよ(いや、知ってはいますけどね・笑)。とは言え、本書で活躍する「人間は外見がすべてだ!」を信条とする爽やかな悪役・ビッグラバーは面白いキャラだと思います。
 それ以外の話だと、切り絵風タッチの『ことば道』、写真マンガ『虚実録プロサッカー選手物語』、シネマスクリーン形態マンガ『ドクターボディー』といった、連載ではなかなかできない試みがなされていることは評価してよいと思います。また、『ことば道』はインターネット普及前に書かれたお話ですが、今みたいなネット社会を前提にするとまた違ったお話になるんじゃないかと思います。
 あと、本書には映画を意識したアイデアが多いのも特徴でして、この頃の島本和彦の興味の対象を窺い知ることができます(笑)。映画の予告編からヒントを得て描きたいことだけ描いたマンガ、『クライマックスがお好き』は酷すぎて笑ってしまいます。そんなのダメに決まってんじゃん(笑)。
 てなわけで、本書は前2巻よりオススメ度は少し下がってしまうのですが、その分、島本和彦度は上がってるという印象です。ま、この評価も私的には前2巻が面白すぎたからであって、本書だって面白さとしては十分だと思います。全3冊、是非お手元に。
※収録作 『ヤマモト』『フィーリングカップル100vs100』『好敵手がいっぱい』『ことば道』『GUY−FAX ガイファックス転参!!』『ログイン熱血劇場 虚実録プロサッカー選手物語』『GUY−FAX 人間は顔じゃない』『ハダカのおうさま』『ドクターボディー』『続・ドクターボディー』『クライマックスがお好き』『ハルマゲドン(序章)』『ハルマゲドン(プロローグ)』『ハルマゲドン(前夜)』『死ぬまでゲーム』『最後の戦い』
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