『サクラダリセット 4』(河野裕/角川スニーカー文庫)

 短編集です。あとがきによれば、どちらかというと設定やキャラクターの補強という意味合いが強い、とのことですが、やはりあとがきにあるとおり、本シリーズはぼんやりしている場面が多くて、だからこそ短編の方がぼんやりした場面を切り取ったお話を描きやすい、という側面はあるのではないかと思います。

ビー玉世界とキャンディーレジスト

 主人公たちが高校1年生になったばかり、入学式の頃のお話です。ビー玉といえばラムネ、というわけではないのでしょうが、ラムネのビー玉には内側からラムネの栓をする役割がありますね。

ある日の春埼さん〜お見舞い編〜

 「どうして皆実さんはケイの携帯の電話番号を知っているのでしょうか?」というところまで考えが及んでたら完璧だと思ったり(笑)。

月の砂を採りに行った少年の話

 長編1と2の間のお話で、猫と意識を共有できる野ノ尾が一人の少年との関係に苦労するお話です。星と星をつないで星座を描くように人と人の間にもつながりを求めてしまうのが人間の面倒臭さなのでしょう。と、あえて悪ぶった表現を用いてみたり。

ある日の春埼さん〜友達作り編〜

 「一度話しただけでは知人だが、何度も繰り返せば友人だ」(本書p186より)。リセットで時間を元に戻せてしまう春埼にとっては、そういう当たり前のことが大事なのでしょう。

Strapping/Goodbye is not an easy to say

「能力なんて関係ない。すべての人の、すべての行動が、未来を変える。リセットだけが未来に干渉すると思っているなら、そんなものは自惚れだ」
(本書p234より)

 長編3のあとに続く過去編です。
 本作ではキットカットですが、本書では他のお話にもチュッパチャップスやアイスやシュークリームといった食べ物がよく出てきます。それは、ともすればぼんやりした場面においてやはりぼんやりしがちな登場人物たちに肉体という輪郭の存在を思い出させる効果を期待してのことだと思います。もっとも、肉体があるからといって、それが生物として存在している証しになるのか、それとも単に血と肉でできている機械にすぎないということになるのかは分かりませんが……。