『イメージと読みの将棋観』と『ハチワンダイバー』

イメージと読みの将棋観2

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イメージと読みの将棋観

イメージと読みの将棋観

『イメージと読みの将棋観』(鈴木宏彦/日本将棋連盟) - 三軒茶屋 別館
 将棋の専門誌「将棋世界」の人気企画に、羽生善治佐藤康光森内俊之谷川浩司渡辺明藤井猛の6棋士が、与えられたテーマについてそれぞれの読みとイメージを披露するという人気企画『イメージと読みの将棋観』があります。好評につき単行本化もされて、現在2巻まで刊行されているのですが、その内容に『ハチワンダイバー』読者が楽しめる、といいますか、何気にハチワンを意識しているであろうテーマ図もかなり採用されています。
 そんなわけで、今回はハチワン読者向けに『イメージと読みの将棋観』の内容をちょこっと紹介してみたいと思いますが、例えば2巻p53です。

 ハチワン読者おなじみ、二こ神さんの得意戦法にして菅田が鬼将会の地下で勝ち星を荒稼ぎした雁木戦法です。もっとも、一部のアマには人気ですがプロではめったに指されることのない戦法なわけですが、その理由が「雁木はなぜ人気がない?」というテーマで6棋士によって語られています。ってか、フルボッコです。森内九段なんか雁木の本書いてるのに酷いや。先手(雁木)勝率のイメージは、一番高い佐藤九段と谷川九段で45%。渡辺竜王に至っては30%です。二こ神さんカワイソス。不人気の理由は玉が薄いこと。他に攻め筋が単調というのも理由に挙げられています。もっとも、藤井九段は勝率イメージこそ挙げていないものの雁木に対して好意的(同情的)で、二枚銀の厚さや右桂と連動しての攻めやすさについてそれなりに評価しています。ただ、後手にちゃんと指されるとやっぱり玉の薄さが気になって……といったニュアンスです。雁木がメジャー戦法になる日は遠そうです。
 続いて2巻p17より「先手石田流には何で臨む?」

 ハチワン5巻で菅田が斬野にフルボッコされた石田流の出だしです。このとき、いったい後手はどのように指すべきなのか。△8四歩、△6二銀、△4二玉、△5四歩といった様々な指し方が紹介されています。
 さらに1巻p105「右四間飛車の成否は?」と2巻p45「矢倉模様に右四間飛車は?」より。


 右四間飛車といえば右角です。相手が振り飛車でも居飛車でも右角はいつでも右四間飛車ですが、その構えと仕掛けは相手が振り飛車居飛車かで異なってきます。そんな右四間飛車について、1巻では四間飛車に対しての急戦策の是非、2巻では後手の右四間飛車に対して居飛車の矢倉模様側の指し方・勝率のイメージが述べられています。特に2巻の矢倉模様対右四間飛車は11巻収録の菅田対右角の居玉のまま殴り合いの変化に直結していますので、興味のある方は是非お読みになるといいと思います。
 他にも、チッチがハチワン14巻で採用した阪田の端歩(1巻p63阪田三吉、端歩のナゾ・その1」)、新型四間(2巻p41「一手損振り飛車は本当に有効か?」)、ハチワン15巻に登場した新鬼殺しの元となった鬼殺し(1巻p51「プロに鬼殺しは通用するか?」*1)、同じくハチワン15巻でドイツ最強が採用した筋違い角(1巻p39「いきなり筋違い角で勝てるか?」)といった序盤についても述べられています。
 というわけで、ハチワンで将棋に興味を持った方にも是非読んでみて欲しい本です。そして、もし3巻が出るとしたら、そのときは是非ハチワンシステムと新鬼殺しをテーマにしていただければ大変ありがたいなぁと思ったりです。
ハチワンダイバー 1 (ヤングジャンプコミックス)

ハチワンダイバー 1 (ヤングジャンプコミックス)

*1:ただし、本書では後手番での鬼殺しの成否がテーマとなっています。しかし、鬼殺しは通常は先手で用いられることの多い戦法でしょうから、先手番を題材にして欲しかったです。