『ドリフターズ』に感じる「ワクワク感」

ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)

ドリフターズ 1 (ヤングキングコミックス)

平野耕太ドリフターズ』1巻が発売されました。
評判も良く、漫画紹介サイトを各所覗いてみても口を揃えて絶賛の嵐です。
平野耕太最新作として注目の「ドリフターズ」第1巻が大好評 :にゅーあきばどっとこむ
フジモリも見事にツボにドストライクし、何度も何度も読み返すほどハマっているのですが、「なんでこんなに面白いんかなー」と客観的に考察してみることにしました。

物語舞台は、とある異世界
エルフやゴブリンなど亜人が住むこの世界に、「漂流物(ドリフターズ)」とよばれる人々が召還されます。
主人公は、「漂流物」、島津豊久。同じく「漂流物」の織田信長那須与一とともに謎の敵と戦い、また自らの業を背負うかのように「天下穫り」を進めていきます。
一方、「黒王」率いる「廃棄物(エンド)」と呼ばれる軍勢もまた、世界を侵略しつつあり。。。というお話です。
まず読んでワクワクするのが、「漂流物」「廃棄物」として異世界に召還される世界の英雄たち。
まさに「スーパー偉人大戦」の様相を呈する「なんでもあり」の世界観は、同作者の『以下略』で描かれた、
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そのまんまの世界です。
(元ネタはFate/stay night - Wikipediaをご参照)
世界の偉人が「指輪物語」を彷彿とさせるハイファンタジー異世界に一堂に会し、世界の覇権を争い戦うという、一歩間違えれば「中二病」と揶揄されてもおかしくない世界観です。
しかし、だからこそ逆に読者の「中二心」をくすぐり、「ワクワク」させる物語である、ということは否定できないと思います。
「世界の偉人が一堂に会する」という設定そのものは他の作品でも見られます。
直近では、スエカネクミコ放課後のカリスマ』などが挙げられます。
この作品では偉人本人ではなくクローンという設定ですが、偉人の「歴史」そのものを背負わされて苦悩する登場人物たちと、彼らにふりかかる悲劇が学園サスペンスとして巧く昇華されています。
しかし、『ドリフターズ』がまた特異なのは、偉人たちの「歴史」「性格」「設定」がそのまま「武力」として示される、平たく言えば「必殺技」となっている点です。
たとえば、火あぶりにされたジャンヌ・ダルク
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と炎を操り、エースパイロット・管野直は
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と戦闘機・紫電改で竜を撃墜しています。
世界の偉人が次々と集うこと、その偉人が背負った背景そのままに「必殺技」を持っていること、そしてそれら偉人(英雄)たちの、歴史上では決してみられることのない掛け合い。
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まさに、「次はどんな英雄が登場するのだろう」という、次の展開に対する「ワクワク感」を呼び起こす作品だと思います。
個人的な定義ですが、「ドキドキ」は物語に対し「続きが気になる」ことによって生まれる感情、「ワクワク」は「まだ見ぬ何か」に対し期待、渇望する感情かな、と考えているのですが、『ドリフターズ』はまさに、「次はどんな「漂流物」「廃棄物」が現れるのだろう、彼らが出会うことによってどんな掛け合いが生まれるのだろう」と読者を「ワクワク」させる漫画なのだと思います。
個人的には今年始まった漫画の中でも上位にランクインする、続きを早く読みたい一冊だと思います。
【ご参考】平野耕太『以下略』ソフトバンククリエイティブ - 三軒茶屋 別館
以下略

以下略

放課後のカリスマ 1 (IKKI COMIX)

放課後のカリスマ 1 (IKKI COMIX)

*1:P31

*2:P182

*3:P196

*4:P204