私家版2009年ネットユーザー向け将棋界10大ニュース

 将棋界は基本的に順位戦を基準とした年度進行なのですが、一将棋ファンとして1年の終わりを迎えていろいろと振り返ってみたくなることもありますので、そんなこんなで勝手に10大ニュースみたいな形式でまとめてみました。とはいえ、普通にやっては面白くないのでテーマはネットユーザー向けで。また、特に順位は付けずに時系列順でまとめただけですのであしからず。

どうぶつしょうぎ

どうぶつしょうぎ (Let's catch the Lion!) ボードゲーム

どうぶつしょうぎ (Let's catch the Lion!) ボードゲーム

 昨年12月にLPSA日本女子プロ将棋協会)から将棋の入門用として作製された「どうぶつしょうぎ」が大ヒット。今年9月には幻冬舎エデュケーションから一般販売。ルールは簡単ながら子供から大人まで楽しめるゲームとしてメディアでも個人ブログでもたくさん取り上げられました。
【関連】
http://joshi-shogi.com/doubutsushogi/
どうぶつしょうぎ (@doubutsushogi) | Twitter
http://www.asahi.com/shougi/topics/TKY200909020244.html
http://media.itc.u-tokyo.ac.jp/ktanaka/dobutsushogi/
メモ(棋譜修正版) - お仕事ブログ

Bonanzaソースコード公開

 2005年6月にフリーソフトとして公開された将棋ソフトBonanzaはその強さであっという間に話題となり、2006年の世界コンピュータ将棋選手権では初出場初優勝という快挙を成し遂げるなど、その強さは将棋ソフト界のブレークスルーとなりました。そんなBonanzaソースコードが今年の1月に公開されました。今後のコンピュータ将棋界の動向に注目です。
【関連】
最強ランクの将棋ソフト「Bonanza」、ついにソースコードを公開 - CNET Japan
Bonanzaのソースが公開された! - やねうらお−ノーゲーム・ノーライフ
コンピュータ将棋ソフト、Bonanzaのソースコードが公開 - 将棋思録〜あり得べき世界の、そのあり得べき理由について、問う。

GPS将棋BOT

 2009年開催第19回世界コンピュータ将棋選手権優勝ソフトGPS将棋のtwitterBOTが今年の7月に登場しました。
gpsshogi (@gpsshogi) | Twitter
 タイトル戦などのネット中継で手の進行に合わせてソフトの読みをリアルタイムで教えてくれるようになりました。この後、BonanzaBOTBonanza (@Bonanza_shogi) | Twitter)や大槻将棋のBOThttp://twitter.com/otsuki_shogi)なども登場してコンピュータ将棋BOT界は一気に充実したものとなりました。コンピュータ将棋が「単に強い指し手」としてのみならず「解説者」としての可能性をも模索し始めたといえます。今後の動向に注目です。
【関連】
TwitterにGPS将棋ボット登場 - 将棋の神様〜0と1の世界〜

英語によるリアルタイム中継

 9月4日に行なわれた第54期王座戦羽生善治王座対山崎隆之七段戦では英語によるリアルタイム中継が行なわれました。
http://live3.shogi.or.jp/ouza/kifu-en/20090904-en.html
 英語中継はこの後の第22期竜王戦でも引き続き行なわれました。地味な活動のように思われるかもしれませんが、海外普及という点において本物を伝えるというのは非常に意味のあることだと思います。
 中継以外にも「シリコンバレーから将棋を観る」は、何語に翻訳してウェブにアップすることも自由」という発言から端を発した英訳プロジェクトや、勝又清和著「最新戦法の話」の英訳プロジェクトなども。海外普及のための努力と成果が分かりやすく伝えられることは大事だと思います。
【関連】
将棋の海外伝播などについてのブログ
「最新戦法の話」英訳プロジェクト - 将棋の神様〜0と1の世界〜

女流王位戦第2局

 10月14日第20期女流王位戦石橋幸緒女流王位清水市代女流二冠戦。それまで優位に進めていたはずの石橋女流王位が自分の歩を飛び越えて角を成ってしまうという痛恨の反則負け。
清水が勝ち、タイ 石橋、痛恨の反則手 - 北海道新聞社
 タイトル戦での反則負けは異例ということで将棋ファンの間でも話題になりましたが、それ以外にもヤフーのトップで報じられたり(反則とはいえ将棋の指し手がヤフートップ入りしたのには驚きました)、翌日の新聞などで大きく報道されたりと大きな話題となりました。
【関連】
いやぁ・・・ - 石橋幸緒のごきげんグラシアス!
石橋幸緒女流王位がタイトル戦で角による豪快な「反則手」で勝局がふいになる: 田丸昇公式ブログ と金 横歩き
豪快な「反則手」で注目された石橋幸緒女流王位の次の対局で、立会人として見た石橋の意外な様子: 田丸昇公式ブログ と金 横歩き

共同声明

 「将棋の日」である11月17日に日本将棋連盟とLPSA日本女子プロ将棋協会)のサイトで共同声明が発表されました。
http://www.shogi.or.jp/topics/about_jyoryu/2009/11/post_233.html
日本将棋連盟との共同声明 - 日本女子プロ将棋協会|LPSA|
 仲良く互いに協力しながら将棋の普及に尽力していって欲しいです。

1局1図

日本将棋連盟では「棋士がブログ等で図面掲載する場合は、1局1図程度にする」ということになったので、今回よりそのようになりますが、ご了承頂ければと思います。
王位戦予選3回戦、近藤六段戦。 - 渡辺明ブログより)

 ファンとしてはネット上で棋士による詳細な棋譜解説があった方が嬉しいに決まってます(笑)。普及という観点からも大事なサービスでしょう。ですが、他方でスポンサーである新聞社などからすればあまり詳細に解説されてしまうと観戦記などの価値が低下してしまいます。そんな両者の要請を調整する基準として「1局1図」程度が定められたものと思います。ブログから観戦記・専門誌といった流れが作られればいいなぁと、活字好きとして願っています。
【関連】
棋士ブログの図面数と観戦記情報 - ある棋士の日常
告知 - サトシンの将棋中心日記
順位戦7回戦小林宏七段戦 - 所司七段ブログ

SHOGI-BAR

 人気棋士橋本崇載七段(ブログ:棋士らしくないブログ)が12月1日にお酒を飲みながら将棋を指せるお店「SHOGI-BAR」をオープンしました。一度は行ってみたい……。
【関連】
【トレビアン】ネットで話題の棋士、橋本七段にインタビュー! 「将棋界一の食通」 - ライブドアニュース

大和証券杯ネット将棋システムトラブル

 大和証券杯ネット将棋(公式ページ)、第3回女流最強戦ではシステムトラブルによる対局中断・感想戦不具合といった事態が頻発しました。
第3回大和証券杯ネット将棋・女流最強戦での一連の障害に関するお詫び|将棋ニュース|日本将棋連盟
 大和証券杯ネット将棋は、通常の盤面を挟んで相対する通常の棋戦とは異なりネットを通じて行なわれる棋戦です。そのため、クリックミスやポップアップによる時間切れなどといった手を指す際の独特のミスはありましたが、今回のようなシステムの根幹に関わるトラブルは異例です。ネット将棋は今や将棋ファンの日常に深く浸透しているだけに安定したシステムが確立されることを切に希望します。
【関連】
トラブル - daichanの小部屋
やっぱり - 石橋幸緒のごきげんグラシアス!

Twitter観戦席

 LPSA日本女子プロ将棋協会)の第31回1dayトーナメント・フランボワーズカップのネット中継でTwitter観戦席が試験的に導入されました。
http://shogi.weblike.jp/public_html/kifu/0912_1day_3-1.html
 右サイドバーに「#lpsa」のハッシュタグをつけたつぶやき(ツイート)が掲載されています。現地で実況してる(=tsudaる)人のつぶやきとネットで観戦しながらのつぶやきが混在していますが、ネット中継の新しい楽しみ方として注目に値する試みだったと思います。将棋とネット中継については今後も様々な動きがあると思いますが、これからも楽しみながら追っかけていきたいと思います。



 以上、ネットユーザー向けの10大ニュースを勝手に挙げてみました。普通だったら羽生王座18連覇とか渡辺竜王6連覇とか深浦王位3連敗4連勝逆転防衛とか清水市代女流三冠といった話題を真っ先に挙げるべきなのですが、そういうのは年度末の専門誌などの特集にお任せします(笑)。
 コンピュータ将棋の話題が多めになりましたが、ソフトの強さは今年も潜在的脅威であり続けています。11月7日に電気通信大学で行なわれた企画「将棋と科学」ではトップアマ相手に信じられない指し回しを見せて快勝しました(参考:「将棋と科学」公開対局:人類、屈辱の勝利 - 将棋の神様〜0と1の世界〜)。プロとソフトの緊張関係はさらに高まってきていると感じています。また、『将棋世界』2010年1月号から「コンピュータ将棋は七冠の夢を見るか?」という短期連載が始まってますので興味のある方にはオススメです。
 また、個人的にはWEB将棋漫画『旭岡高校将棋部』に出会えたのは外せないかなぁと(参考:Web将棋漫画『旭岡高校将棋部』がとても面白い件 - 三軒茶屋 別館)。
 なんやかんやといろいろありましたが、一将棋ファンとしては楽しい1年でした。将棋界の今後はいろいろ困難もあるかと思いますが、来年もなんやかんやと楽しい1年になることを祈念しています。