私家版2009年新連載マンガBEST5

私家版2009年完結マンガBEST5 - 三軒茶屋 別館
終わりがあれば始まりがある、ということで、前回は2009年に完結した漫画ベストをご紹介しましたが、今回は2009年に始まった(単行本が発売された)漫画のなかでフジモリが今後も楽しみにしているベスト5をご紹介します。

第5位 田川ちょこ『ひかるファンファーレ』芳文社

ひかるファンファーレ 1 (まんがタイムコミックス)

ひかるファンファーレ 1 (まんがタイムコミックス)

今年は音楽漫画を大量に読んだ年でしたが、
音楽サークル漫画のグラデーション - 三軒茶屋 別館
私的チューバ娘ランキングベスト5 - 三軒茶屋 別館
そのなかでもけっこう気に入っているのがこの4コマ漫画。
「チューバ」という楽器の属性と特徴をきっちりとらえ、「あるある」的な笑いに昇華しているのが面白く、ブラスバンド経験者なら共感しながら笑ってしまうことうけあいです。
田川ちょこ『ひかるファンファーレ』芳文社 - 三軒茶屋 別館

第4位 荒川弘百姓貴族

百姓貴族 (1) (ウィングス・コミックス)

百姓貴族 (1) (ウィングス・コミックス)

エッセイ漫画ながらしっかりとした「漫画」であり、「ハガレン」のテンションそのままで、「農家」という「非日常な日常」を楽しめる一冊です。
来るか!?農家ブーム!?(笑)
ハガレンの根っこが見える農家エッセイ 荒川弘『百姓貴族』 - 三軒茶屋 別館

第3位 河原和音青空エール集英社

青空エール 1 (マーガレットコミックス)

青空エール 1 (マーガレットコミックス)

正確には1巻が2008年末の刊行なので本来ならば対象外かもしれませんが、是非ともランキングに入れたいのでピックアップしました。
甲子園を目指す球児を支える「ブラスバンド」という応援団。
この漫画はまさに「応援する女の子」が主人公なのですが、ひたむきさと前を向くけなげさ、そして憧れの男の子との励まし合いが甘酸っぱくも読者に元気を与える、まさに「青春漫画」です。
河原和音『青空エール』集英社 - 三軒茶屋 別館
『青空エール』が描くもうひとつの「高校野球」 - 三軒茶屋 別館

第2位 大場つぐみ小畑健バクマン。集英社

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

バクマン。 1 (ジャンプコミックス)

こちらは1巻刊行が2009年1月でしたが連載そのものは「2周目」に入っています。
『このマンガがすごい2010』でも1位になっていましたが、漫画家マンガという内部暴露的な題材でありながら、スポ魂ものを基盤とした実に「基本に忠実な」サクセスストーリーを描く漫画だと思います。
「2周目」に入りキャラクタ間のやりとりが華やかになってきましたが、「漫画のストーリーの作り方」という意味でも参考になる漫画だと思います。
『バクマン。』と『DEATH NOTE』を比較して語る物語の「テンポ」と「密度」 『バクマン。』1巻書評
『バクマン。』と『まんが道』と『タッチ』と。 『バクマン。』2巻書評
『バクマン。』が描く現代の「天才」 『バクマン。』3巻書評
編集者という「コーチ」と、現代の「コーチング」 『バクマン。』4巻書評
漫画家で「在る」ということ。 『バクマン』5巻書評

第1位 森薫乙嫁語りエンターブレイン

乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)

乙嫁語り 1巻 (BEAM COMIX)

2009年最大の収穫がこちら。
19世紀イギリスを舞台にしたメイド漫画『エマ』では作者のメイドに対するなみなみならぬ愛が溢れており、見事な幕引きをした後の次作はどうなるのだろうと思っていましたが、今作は19世紀の中央アジアが舞台。
しかしながら後書きで作者自ら「昔から好きだった」と言っているとおり、これまた作者の趣味と愛情を一心に受けた漫画が出来上がりました。
服のしわ一つ一つまで作者の筆が入っているその絵柄はまさに「芸術品」であり、「職人」を感じさせます。
森薫「乙嫁語り」 - コミックナタリー 特集・インタビュー
まさに神は細部に宿る。
「絵」そのものを楽しむ漫画に久々に出会うことができましたし、「好きなものを描いて評価される」という希有な作り手だと思います。「読む」のであり、また「観る」だけで満足できる作品で、続刊が楽しみです。

2009年に始まった漫画なので当然物語が序盤な漫画がほとんどですが、1巻を読んだ時点で「続刊が楽しみ」という漫画に出会えることは読者として最良の一瞬であることも事実です。もちろん、すでにクライマックスに突入している「2009年”も”面白かった漫画」も多々ありますが、2010年もまた新たな出会いができればと思います。
当blogの読者様も来年もまた素晴らしい漫画と出逢えますように。