「ホームズ型」と「金田一型」

「金田一」と「コナン」で、よく「金田一」は「コナン」より犠牲者が多いって言いますが、あれって、おかしくないですか? -Yahoo!知恵袋

金田一」と「コナン」で、よく「金田一」は「コナン」より犠牲者が多いって言いますが、あれって、おかしくないですか?
そりゃ、「金田一」は、長編なら、1事件あたり3〜4人の犠牲者が出ることは珍しくありません。が、短編は0〜1。短編では、犠牲者が出ない話も意外と多く、全27話中9話(自殺の話も含む)が犠牲者0。残りの18話でも、2人以上の犠牲者が出た話は、今のところ1つもありません。
しかし、「コナン」にしても、連載が長く、事件数が多いぶん、1事件あたりが1〜2人としても、トータルすると、かなりの人数にのぼります。

現在掲載されている推理マンガの2大巨頭といえば『名探偵コナン』と『金田一少年の事件簿』だと思いますが、両者の物語の構造は大きな違いがあります。
名探偵コナン』は短い話だと2話完結など非常にコンパクトな事件が多く、また事件そのものも殺人以外を取り扱うお話が結構あります。
一方の『金田一少年の事件簿』は、短編があるもののやはり10話以上、単行本1巻以上を使う長編が多く、1回の事件で多くの被害者が殺されるという物語構造を持っています。
双方の物語構造は、それぞれの主人公の名前の元ネタであり、キャラクタ造型のロールモデルとなっている「コナン(コナン・ドイル)」すなわち「シャーロック・ホームズ」シリーズと「金田一耕助」シリーズ(作者:横溝正史)との違いであるといえるでしょう。

シャーロック・ホームズは結局、56の短編と4つの長編に登場した。
アーサー・コナン・ドイル -wikipediaより

とあるようにシャーロック・ホームズシリーズは短編がメイン。また、「赤毛連盟」のように殺人以外の事件もけっこうあります。
一方、金田一耕助シリーズは、

金田一耕助が登場する作品は、長短編併せて77作(中絶作品・ジュブナイル作品等を除く)が確認されている。
横溝正史 wikipediaより

とあり、実際長編はwikipediaを数えたところ26編ありました。
フジモリは浅学にして全ての作品を読んだわけではないので明断はできませんが、やはり印象に残る小説は『犬神家の一族』『獄門島』『悪魔が来りて笛を吹く』など長編かつ連続殺人なお話が多いです。
短編が多く殺人以外も多々取り扱う物語の構造を持つ「ホームズ型」と、長編が多く1作の中で多々殺人が起きる物語の構造を持つ「金田一型」、それはすなわち『名探偵コナン』『金田一少年の事件簿』両者の物語構造であり、巧い具合に住み分けができています。
とは言うものの、コナンで殺人事件が1巻に3〜4話収録されれば1巻で3〜4人殺される金田一と同程度の被害規模なわけで(笑)、「週刊連載」というシステムで読者の興味をつなぎとめる「手法」そのものは共通なのかなぁ、と思っています。