『孤独のグルメ』と「モヤモヤさまぁ〜ず2」

孤独のグルメ』読了。ヤマカムさんで紹介されてて美味しそう面白そうと思っていたところ、ジュンク堂本店で試し読みしたら面白かったので即買い。ついつい最後まで一気読みしてしまいました。
ストーリーらしいストーリーは特に無く、主人公・井之頭五郎が行く先々でご飯を食べるだけのシンプルなマンガなのですが、これがまたことのほか面白い。

例えば、ぶらりと立ち寄った一軒の定食屋。

お腹すいたーそこで出てきた定食が意外に美味しい。
主人公の静かな語り口がまたその美味しさを引き立てます。ただ単に「ご飯を食べる」。しかしながらそこに「ドラマ」が発生しているのです。
この漫画を読んでフジモリが真っ先に思い浮かべたのは、テレビ東京でやっている深夜番組「モヤモヤさまぁ〜ず2」

世の中には、私たちがまだ知らない世界がたくさんある!
通い慣れた駅までの近道を1本外れて歩いてみる。
普段は素通り、酔っ払って寝過ごした時にしか降りないような駅にふらっと降りてみる。
するとそこには、面白くて、くだらなくて、でも何か気になるような、そんな私たちを虜にしてしまうお宝がある!!
そして今日も、そんなお宝を求めて、さまぁ〜ずが旅に出る!!

という番組紹介にもあるとおり、この番組はさまぁ〜ずと大江アナが「出没!アド街ック天国」にも紹介されないようなマイナーな街をただただ歩き、ふらりと寄ったお店で買い物をしたりご飯を食べたりするだけなのですが、これがまたことのほか面白いのです。
モヤモヤさまぁ〜ず2」の魅力について、さまぁ〜ず大竹一樹はこう語っています。

あんまり人と絡むの好きじゃないんですよ。で、ただキャッチボールしてたり、ガチャガチャやってるだけだったり。スタッフがいい意味でバカというか、他の番組であれば使わないようなところをこの番組では使ったりしますからねぇ。(雑誌QuickJapan vol.74 p60)

また、プロデューサーはこう語っています。

さまぁ〜ずの)2人は見た目に派手なインパクトがあるわけじゃないし、すごく女性にモテるタイプかっていうと、別にそんなにモテないだろうと。ただ、モテたいモテたいって空気を出していない、力の入ってなさは逆に、人を退けないですよね。(雑誌QuickJapan vol.74 p71)

モヤモヤさまぁ〜ず2」は町をぶらぶら歩く自然体の3人を、過度な演出を加えず淡々と映すことで、1000円自販機や公園での水風船遊びなどの「普通のこと」が逆にイベントとして浮かび上がっているのだと思います。
「なんでもないこと」として普段は切り捨てられてしまう日常の出来事。しかしながら、過剰な演出によるイベントが「日常」となっている現代において、「なんでもない日常」をあえて切り取ることで「異の中の異」として逆に際立ちます。
同じように、『孤独のグルメ』も主人公が淡々と食事をする、それを淡々と描くことにより、普通の食事が「ドラマ」として映えてくるのかなぁ、と思いました。

孤独のグルメ 【新装版】

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