弱者の戦術論。『伊藤Pのモヤモヤ仕事術』

伊藤Pのモヤモヤ仕事術 (集英社新書)

伊藤Pのモヤモヤ仕事術 (集英社新書)

万年最下位の事実は揺るがない。だとしたら勝ち方を考えましょう、と自分を納得させていきました。会社にないものを求めてもしょうがない。じゃあどうすればいいかを考えた時、正しいかはともかく、その答えを自分なりに持っていなければいけないと感じたのです。(P25)

 「モヤモヤさまぁ〜ず2」「やりすぎコージー」など異端なテレビ局テレビ東京で深夜帯を中心に異端なテレビ番組を世に放っている伊藤Pこと伊藤隆行プロデューサーが、自身のこと、テレビ東京のこと、自身が手がける番組のことなどを語っているエッセイです。
 著者は、自身のつとめているテレビ東京を「万年最下位」「テレ東の番組は他局にパクられて終わっていく」など身も蓋もない事情をいろいろとぶっちゃけます。
 それは卑下でも自虐でもなく、冷静に客観的に自分たちの立場を理解しているということで、その「万年最下位の局がどうやったら他局に勝てるのか」という方法を考え、低コストながらインパクトを重視した数々の番組を生み出していったわけです。
 このあたりはビジネスの世界にも通じるところがありますし、またblogなんかでもいえますよね。
 ウチなんかもネットの片隅で細々と慎ましやかに書評しているblogですが、まともに戦っても大手blogには勝てませんので「いかに個性を出すか」という点にはこだわったり気にしたりします。それが読者の方々に伝わってるか伝わってないかはともかく、本書にもある「弱いやつがいかに強いやつに勝つか」という共通点はあるんじゃないかな、などとシンパシーを感じました。
 他にも、プロデューサーの役割や企画の考え方、いちサラリーマンとしての仕事のやり方、そしてテレビについて考えることなど、読みながら「ほー」「へー」と頷いたり参考になったりすることが多々ありました。

 テレビVS震災の勝敗でいうと、「テレビは負けちゃだめ」だと思います。テレビマンが「もっと番組を面白くする」という本来やるべきことを忘れて、震災の影響に対して過度に反応したり、一人歩きした「不謹慎」に屈するべきではない----。それは、番組を被災者に笑ってもらったことで、僕の中では確信になっています。(P239)

 著者の番組が好きな人はもちろん、ビジネスマン、テレビ好きなど様々な人に読んでもらいたい一冊です。