麻雀+ラノベ=『ナナヲ・チートイツ』

ナナヲ・チートイツ (メガミ文庫)

ナナヲ・チートイツ (メガミ文庫)

麻雀とは運10の遊びである。
阿佐田哲也『Aクラス麻雀』p18)

アイヨシに紹介されて衝動買いしてしまいました。メガミ文庫って初めて知りましたよ。
あらすじですが、
コンビ打ちをしていた父親に裏切られ、多額の借金を背負った若き麻雀打ち中也。
ヤクザの男娼として過ごす彼が自由を手にするために闇麻雀大会への参加を希望する。
中也がパートナーに選んだのは、自分と同じような境遇の少女・七緒だった。。。
というお話です。
オビにも書いていますが、「この表紙は詐欺です」とあるとおり、結構ちゃんとした麻雀小説です。
ライトノベルが「漫画の文法で書かれた小説」(by新城カズマ)であるならば、麻雀漫画のプロットで綴られるこの小説は立派なライトノベルだと思います。
麻雀漫画はいくつかの種類がありますが、この漫画は「咲」のような「麻雀」を触媒とした人間ドラマだなぁ、というのが率直な感想です。*1
実際、闘牌シーンは何回かありますが、「麻雀ならではの読み合い」は薄めです。また闘牌シーン中に下段にキャラ同士の掛け合いによる「解説」が添えられています。
これは作品の性質というより「麻雀小説」の宿命かな、とも思います。全員の捨て牌が一望できる「漫画」という表現方法でこそ活きる「駆け引き」は存在すると思っています。
フジモリのような根っからの麻雀好きには物足りないところがありますが、ライトノベルの主要読者層と思われる麻雀覚えたての人たち向けには程よい「熱さ」と「濃さ」ではないでしょうか。
まあ「薄い」とはいうものの、麻雀漫画・麻雀小説のシチュエーションはしっかり押さえられていると思います。「盤外戦(この場合卓外戦)」で揺らしにかかる『麻雀放浪記』、「運不運」をメンタルや「格」によって引き込む『兎』*2などなど。特に麻雀と人生観を重ね合わせる『兎』と重なる部分もありますので*3、この小説から麻雀漫画に興味をもたれた人は真っ先にオススメします。
麻雀小説とラノベの組み合わせというぱっと見では違和感がありますし、決して万人受けする小説ではないです。とはいうもののまさかラノベで「牌写植」を拝めるとは思っても見ませんでしたので、その一点だけでも満足です(笑)。麻雀とラノベの食い合わせを味わいたい方にはコッソリとご紹介する一冊です。
伊坂幸太郎が書く麻雀小説『砂漠』 - 三軒茶屋 別館
『魔王』の伊坂幸太郎が書いた麻雀小説です。麻雀の楽しさが伝わります。
吉田親司『彼女はQ』電撃文庫 - 三軒茶屋 別館
こちらはギャンブル+ラノベジョジョを思わせる駆け引きの妙が楽しめます。

*1:どうでもいいですが、「手配」は「手牌」の誤字だと思います。p254

*2:マルドゥック・スクランブル』もこれですね

*3:読了直後のフジモリのツッコミ。「ヴィヴィアンかよっ!」