『DAI-HONYA』の源泉 とり・みき『冷食捜査官』
- 作者: とり・みき
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/11/21
- メディア: コミック
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時は近未来。安全無害の合成食料の完成により、食料統制が始まった。雑菌だらけで汚染された自然食品は製造・飲食が禁止となり、冷凍食品も所持することすら禁止された。それでも食料統制以前に作られ地下の貯蔵庫に眠っていた大量の冷凍食品がブラックマーケットで取引されている。巨額の金と血を賭してまで“ 冷食” を求める連中は後をたたない。冷食シンジケートが暗躍する中、我らが農林水産省・冷食捜査官が立ち上がる!
近未来を舞台としたとり・みきのハードボイルドSF風ギャグ漫画です。
表紙からしてかの傑作『DAI-HONYA』を思い起こさせますし、舞台設定やトーンも『DAI-HONYA』のテイスト。奥付を見ると最初の数話は『DAI-HONYA』よりも先に雑誌掲載されており、いわば『DAI-HONYA』の源流とも言える作品かもしれません。
『書店法』成立に伴う本の特殊化が引き起こした書店の凶悪犯罪と「書店管理官」を描いた『DAI-HONYA』ですが、今作『冷食捜査官』は自然食品が食べられなくなった近未来が舞台です。
全ての食品が合成食品になり、雑菌だらけの自然食品は規制される世の中。しかしながら地下の冷蔵庫に眠っていた大量の冷凍食品(冷食)が裏ルートで出回り、シンジケートが生まれる始末。
主人公・田北*1は農林水産省の冷食捜査官。今日も今日とて、ミックスベジタブル、冷凍ピザ、冷凍マグロなどなど、さまざまな冷食がらみの事件に立ち向かっていく・・・というお話です。
ギャグまでもハードボイルド、という感じで、密度の濃い小ネタやSF小説や楽曲をもじった各話のタイトルなど読者をくすぐる要素満載なのは相変わらず。元ネタがわかってもわからなくても楽しめると思います。
食のトラブルが相次ぐ現在、この舞台設定を腹を抱えて笑うことができないところが恐ろしいところですが、興味もたれた方はご一読いただいても損はないかと思います。
- 作者: とりみき
- 出版社/メーカー: アスキー
- 発売日: 1993/11
- メディア: 単行本
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(おまけ)
各話の元ネタ一覧です。
冷たい女:エルヴィス・プレスリーの楽曲『冷たい女(Hard Headed Woman)』
Strowberry Fields forever : ビートルズの楽曲『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』
黄金三角を持つ男 : モーリス・ルブラン『黄金三角』+映画『007/黄金銃を持つ男』
10月はたそがれの国 :レイ・ブラッドベリの短編小説集『十月はたそがれの国』
チャイナタウン:映画『チャイナタウン』
笑う配達人:これだけわかりませんでした。情報求む!
マグロの出てきた日: 映画『魚が出てきた日』かな?
コオリの微笑:映画『氷の微笑』
寒い穴から帰ってきた捜査官:ジョン・ル・カレ『寒い国から帰ってきたスパイ』
Memories of you:ベニー・グッドマンの曲『メモリーズ・オブ・ユー』
Orange Express: 渡辺貞夫の曲『オレンジ・エクスプレス』
French Connection:映画『フレンチ・コネクション』