『魔少年ビーティー』に見る『ジョジョの奇妙な冒険』への萌芽
- 作者: 荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1984/10
- メディア: コミック
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改めて読むと、この漫画の特異性やのちの『ジョジョの奇妙な冒険』との共通点が見え隠れし、非常に面白かったのでメモ代わりに記事にしてみます。
「今更なに言ってんの!?そんなの荒木ファンなら常識だよ!」とお怒りになられる方もいらっしゃるかもしれませんが、何卒ご容赦を。
『魔少年ビーティー』とは?
『魔少年ビーティー』は荒木飛呂彦が週刊少年ジャンプで1983年の42号-51号に連載した作品です。
平凡な少年、「麦刈公一」。彼が語る親友「ビーティー」(イニシャル)のエピソードを5話収録しています。*1
ビーティーはいじめてくるクラスメイトを逆にとっちめたり、イヤな先輩をとっちめたり*2恐竜の化石を盗もうとしたりと、少年漫画にあるまじきキャラであり、その時点で当時同時期に連載されていた「キャプテン翼」や「ウイングマン」などとは全く毛色の異なった作品です。まさに『バクマン』言うところの「2割が支持する漫画」だったのかも。
また、ビーティーは手品を得意とし困難に対し物理トリックや心理トリックで立ち向かうという、これまた少年漫画らしくないキャラです。同じく同時期に連載されていたのがマッチョな格闘漫画『北斗の拳』。のちのジャンプのバトル漫画ブームの魁を担う作品です。
『バオー来訪者』『ゴージャス☆アイリン』や『ジョジョの奇妙な冒険』第一部もこれに引きずられマッチョな戦いがメインでしたが、第二部からトリッキィな戦い方にシフトしていきます。ある意味、『魔少年ビーティー』に戻ったといえるのかもしれません。
コーイチ
ビーティーの友人であり語り手である麦刈公一。コーイチといえばジョジョファンが真っ先に思い浮かべるのは第4部の裏主人公・広瀬康一ですが、『魔少年ビーティー』のコーイチは彼に非常に良く似ています。
まずは見た目。
そして、「巻き込まれ型の語り手」である、という点。『ジョジョの奇妙な冒険』第4部も広瀬康一の語りから入り、語りで終わっていましたし、平凡な彼は様々な事件に「巻き込まれ」、スタンドを発現させ、そして杜王町の戦いに身を投じていきます。
巻き込まれ型でありながらしっかりとした「意志」を持つ点も、両者に共通していると思います。
wikipediaにも「麦刈公一は広瀬康一の原型」と書かれていますが、両書を読むと、なるほど、と頷くことでしょう。
ビーティーのトリック
主人公・ビーティーは当時の少年漫画では異質の、肉体ではなく頭脳(トリック)で困難を解決する、というキャラだということを先ほど説明しましたが、それを体現するエピソードを。これは『ゴージャス☆アイリン』に収録されている、『魔少年ビーティー』のいわば第一話です。
突然消えるビーテイー。
密室で消失というと『ジョジョの奇妙な冒険』のポルナレフVSアレッシー戦を思い浮かべますが、まさにその「鏡のトリック」が使われています。
ヒロインがいない
『魔少年ビーティー』は全5話ですが、ヒロインをはじめいわゆる「女性キャラ」がほとんど登場しません。繰り返しになりますが、同時期の漫画は「キャッツアイ」「ウイングマン」など、美少女キャラが人気を集めた時代。あの「北斗の拳」でさえ少女リンやヒロイン・ユリアを配しているのに対し、『魔少年ビーティー』ではあえて言うなら第2話でビーティーが憧れている先輩なのでしょうが、ほぼ(というか一切)物語に絡むことはナシ。
間に『バオー来訪者』『ゴージャス☆アイリン』を挟むものの、その流れは『ジョジョの奇妙な冒険』にも引き継がれていきます。
とまあ、『魔少年ビーティー』と『ジョジョの奇妙な冒険』(主に第2部以降)との共通点をつらつらと述べてみました。こうしてみると、『魔少年ビーティー』が当時のジャンプで占める位置、特異性というものが浮かび上がってきて、非常に興味深かったです。
ただ、フジモリはリアルタイムで読んでないので、もし当時を知る方がいらっしゃいましたらそのときの様子をコメントでご一報いただけたら幸いです(笑)。
ご興味もたれましたら是非是非読んでいただきたい、『ジョジョの奇妙な冒険』のルーツを知ることのできる一冊だと思います。