名ゼリフ「てめーはおれを怒らせた」が持つ「重み」
- 作者: 荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1992/08/04
- メディア: コミック
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『ジョジョの奇妙な冒険』第3部(以下:ジョジョ3部)の魅力を語りだすときりがありません。ジョースター家とDIOの長きにわたる因縁、超能力をビジュアル化した「スタンド」という画期的な表現手法、「やれやれだぜ」「ブラボー!オー!ブラボー!」などに代表される名ゼリフ・・・。
そんなジョジョ3部ですが、「”理”による戦い」、という要素がその魅力の一つであることは間違いないでしょう。それまでのバトル漫画は逆境から「怒り」などの「情」によって逆転したり、「後だしの必殺技」によって勝ったりと、ともすれば「ご都合主義」ともいえる勝負をしてきました。*1
しかしながらジョジョ3部では、それらとは一線を画す戦い方でした。
1部で筋骨隆々、自らの肉体を鍛えた戦いが、2部ではトリッキーともいえる「頭脳戦」による戦いにシフトしました。そしてその集大成とも言うべき第3部。いわば「理」による戦いです。「スタンド」という「主人公の能力が全て明らかになっている」勝負において、「意外な使い方」により勝つことで、読者は「意外」と「納得」の二つの感情を同時に味わいました。霧のジャスティス戦、脳内のラバーズ戦、などなど、ベストバウトを語るだけでこれまた一晩は平気で語れると思います。
当時のバトル漫画の主流と真逆の方向性を向くことで「異端の美」とも言うべき存在であったジョジョ3部。しかしながらその後のバトル漫画の流れが「異端」であるジョジョに続いていったというのは歴史の皮肉とも言えるかもしれません。
ところが、承太郎とDIOとの最終決戦において、
これまで「理」によって勝ってきた承太郎が初めて「怒り」という「情」を口にします。現象だけ取り上げると、他のバトル漫画のように主人公が「怒り」によって勝つ、というお決まりのパターンかもしれません。しかしながら、ジョジョ3部ではここまで「理による戦い」を積み上げてきました。積み上げて、積み上げて、そして最後の戦いでそれまでの戦いとは真逆の(そしてそれはバトル漫画では本流の)勝ち方をする。まさに、読者に最大の「意外」と「納得」、そして「カタルシス」を与えた戦いだったと思います。
『てめーはおれを怒らせた』*2
このセリフに、ジョジョ3部の全てが濃縮されるといっても過言ではないかもしれません。