森博嗣『フラッタ・リンツ・ライフ』中公文庫
フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/06/01
- メディア: 単行本
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『ダウン・ツ・ヘヴン』既読のかた推奨です。
この巻から主人公はキルドレ・栗田仁郎(クリタジンロウ)です。
『ナ・バ・テア』で辻間の死後に比嘉澤とともに「栗田」が配属されましたが、同一人物かどうかは不明です。
この巻では彼女から見た「草薙水素」について描かれています。
あらすじ
「僕」ことクリタは上司の草薙と戦闘機で空を駆け、墜ちた同僚の恋人相良を訪ね、娼婦フーコのもとに通う日々を送っている。
そんな淡々とした日々を過ごす「僕」だが、あるきっかけで「キルドレ」とクサナギの秘密を知ってしまい・・・というお話です。
世代交代
今作の主人公は草薙の部下である「僕」ことクリタです。
クリタもまた優秀なパイロットではありますが、草薙と異なりストイックさはありません。
敵機を撃墜し生還した晩は娼婦を抱き、同僚・土岐野と軽口を叩きあいます。まさに英題「Flutter into Life」、人生を「ひらひら舞って」います。
上司であるクサナギは部下に恐れられているらしく、
「下品なことを口にしたらクサナギ氏に叱られる。私の空を汚さないで」(p52)
とやや堅い上司と思われています。『ナ・バ・テア』『ダウン・ツ・ヘブン』を読んだ読者は、「戦闘機乗り」を追及しようとした彼女の変貌ぶりに軽い驚きを覚えるでしょう。
しかしながらクサナギとクリタの共通項もあり、クリタもまた「飛行機に乗っていたいから」(P111)と空への渇望というモチベーションを持っています。
クサナギの人生にティーチャやヒガサワが交差したように、クリタの人生にもクサナギが大きな影響を与えます。ただしそれは、かつてのクサナギではありませんでした。