とよ田みのる『FLIP FLAP』講談社

FLIP-FLAP (アフタヌーンKC)

FLIP-FLAP (アフタヌーンKC)

 不器用な高校生の恋愛を軽妙なボケと突っ込みで清々しく描ききった傑作『ラブロマ』を描いた、とよ田みのるの最新作です。
 この作品、パイロット版が『月刊アフタヌーン』で掲載されましたそうですが、ほぼ書き下ろしだとのこと。

あらすじ

 普通だった自分を変えるため、高校卒業をきっかけに好きだった山田さんに告白した主人公深町ミチオ。山田さんの条件はただ一つ、ピンボールでハイスコアを出すことだった。
 深町くんは山田さんの心をつかむため日夜ピンボールに励むが、次第にピンボールの世界に魅了されていき・・・、というお話です。

ピンボール・ラブコメ

 オビに「世界初(?)のピンボール・ラブコメ」と書いていましたが、確かにピンボールを題材にしたマンガ、しかもラブコメとなると珍しいです。しかしながら、読み始めると作品世界に引き込まれ、一気に読了してしまいました。
 まずはなんといっても、ヒロイン山田さんのキャラ設定が秀逸です。いかにもな不思議顔(特に口)で、性格も不思議系。

 ピンボールのことになると集中して他が見えなくなるというかなり変わった子ですが、キャラ造型がほんわかしてることもあり、なんとなく許せてしまいます。(もちろん、深町くんのツッコミあってこそかもしれませんが)
 ストーリーそのものは前作『ラブロマ』を彷彿とさせる、ボケとツッコミのオンパレード。このへんのキレとテンポのよさは相変わらずで、非常に面白かったです。
 ピンボールという題材ですが、マイナで静的でマンガにしづらいかと思いきや、巧く物語に取り込んでいます。*1深町くんのピンボールの上達に伴い、次第に二人の距離が縮まっていくという、「成長」が「恋愛の進展」に結びつくというラブコメの王道パターンであり、なんというか、安心して読めるなあ、と思いました。
 また、ラブコメ要素のみならず、ピンボールと通じて「一つのことに集中すること、突き詰めることの楽しさ」ということを巧く描いていると感じました。
 全一巻とコンパクトにまとまっており、前作『ラブロマ』が好きだった人はもちろん、「ラブコメはちょっと・・・」という方にもオススメできる一冊です。

ラブロマ(1) (アフタヌーンKC)

ラブロマ(1) (アフタヌーンKC)

*1:このあたりの話は後日別記事でします。