有川浩『シアター!2』メディアワークス文庫

シアター!〈2〉 (メディアワークス文庫)

シアター!〈2〉 (メディアワークス文庫)

 有川浩シアター!』2巻目です。
 300万の負債を抱えた小劇団「シアターフラッグ」の「泣き虫主宰」こと春川巧の兄、司が「300万貸す。ただし2年で返せなかったら劇団をつぶせ」と、劇団の仲間と主に紆余曲折しながら「趣味の集団」である「劇団」を「黒字が出る組織」に変えようとしていく、というのが主な内容です。1巻のプチ書評はこちら。
有川浩『シアター!』メディアワークス文庫
 個人的に続巻は出ないものかと思ってましので、返済期限までしっかりと話が続きそうで個人的にうれしい限りです。
 『シアター!』は、「劇団」という特殊な組織に、社会人である司の目から、様々なつっこみが入るところが面白さの一つです。

「大体、下品な商業主義とか何様だこいつ」
巧に説教をして後回しにしていた自分の怒りが追いついた。
「純粋に演劇に打ち込めとかふざけるな。自分を楽しませるためにシアターフラッグの役者は貧乏してろってか、どこの王侯貴族の言い分だ」
(P75より)

 「もしドラ」とまではいかないものの、「ビジネス」という尺度で「劇団」という「芸術、表現活動の組織」を「異化」するという独特の切り口が有川浩らしかったのですが、しかしながら1巻はそちらの方に筆を割きすぎた感もありました。
というわけで2巻なのですが、これがまたラブがコメする安心の有川クオリティ。思わずニヤニヤしてしまうこと請け合いです。「甘有川」*1を楽しみたい人は大満足な巻だったのではないでしょうか。
 団内の恋愛模様に加え、シアターフラッグの借金返済も大詰め。この巻では、団員それぞれにスポットライトがあたり、それぞれの「成長」のエピソードがあります。
 まさに、「1巻では物語の大枠を説明し、2巻でキャラを掘り下げ、3巻でそのキャラたちが物語を集約させる」というこれまた安心の有川クオリティになりそうで、3巻が待ち遠しいです。
 個人的には、この小説のヒロインと言っても過言ではない司のツンデレっぷりに磨きが掛かって良かったです(笑)。
 3巻の完結を待って、さまざまな人にお勧めしたいシリーズだと思います。

*1:フジモリが勝手に命名。対義語は「辛有川」。