ブローノ・ブチャラティに学ぶリーダー学(その3)
■ブローノ・ブチャラティに学ぶリーダー学(その1)
■ブローノ・ブチャラティに学ぶリーダー学(その2)
4日間に渡り「ブローノ・ブチャラティに学ぶリーダー学」と題し講義を行っております。
本日は3回目の講義、「マネージメント…一癖ある部下をまとめるためには」です。
5.マネージメント…一癖ある部下をまとめるためには
一癖も二癖もあるメンバーが揃っているチーム・ブチャラティ。
ブチャラティは彼らをいかにまとめ「チーム」として機能させていたか。
チーム・ブチャラティのエピソードから彼のマネージメント能力を学びましょう。
5−1.コミュニケーションの場を持つ
チーム・ブチャラティはリーダーであるブチャラティを含め6名という少人数の集団です。
彼らは、しばし皆でランチをとっています。
こうやってチームの皆で食事をとるということには、幾つかのメリットがあります。
1つ目は、チームの絆が深まるということです。
一昔前は「飲ミュニケーション」という言葉があったそうですが、会社でも皆で飲みにいくことで親睦を深めていました。現在では上司が強制的に部下を呑みに誘うとパワハラになりますし、「シラフ男子」のように飲むこと自体好まない部下もいます。しかしながら一緒に食事をするなど仕事以外でコミュニケーションを図ることで、潤滑な人間関係を構築するという側面は否定できないかと思います。
チーム・ブチャラティも、皆でランチを取り、くだらない話をしながら親睦を深めています。
これはリーダーであるブチャラティが「家族的な付き合いを大事にする」からであり、彼の性格がわかるイベントだといえます。
2つ目は、チームで情報共有が図れるということです。
かつて江戸時代の大名である上杉鷹山は、自国の財政を立て直す改革を進めるにあたり、足軽まで含め全ての部下を館に入れ、これから行なう改革について説明し、一方で現場の声を直接聞きたいと話しました。
通常トップダウンで行なわれる政策を現場の一人一人に説明したというエピソードですが、この故事からも分かるとおり、組織で大切なのは情報の共有です。全員がランチという場にいることにより会話の内容や議論が共有でき、ひいては知識や経験の共有に繋がるわけです。
当初、新入りであるジョルノ・ジョバァーナはチームのお茶会に招待された際に手荒な洗礼を受けました。
しかし彼が実績をあげるにつれチームのメンバーを認めるようになり、そしてジョルノもランチに加わるようになります。
このランチのシーンは、彼がチームに受け入れられたことを示す、重要なシーンなのです。
ピーター・ドラッカーは著書『マネジメント』のなかで、「コミュニケーションが成立するには、経験の共有が不可欠だ」と言っています。
ランチという場でチームの皆が経験を共有し、議論しあうことでチームが一丸となり動く「以心伝心」につながるコミュニケーションを磨いているのです。
何気ないランチにも、彼がリーダーである秘訣が隠されているのです。
5−2.仕事は複数の人間に振る
チーム・ブチャラティが任務に当たる際には、必ず二人以上のメンバーが担当しています。
ポンペイの「犬のゆか絵」にある鍵をゲットせよ!
ヴェネツィア・国鉄サンタ・ルチア駅の像にあるOAディスクをゲットせよ!
チョコラータを追え!
リーダーとして完璧であるように思われるブチャラティですが、当然ながら失敗のエピソードはあります。
幹部として初めての仕事である「トリッシュ・ウナ」の警護にあたり、警護に人数を裂きすぎてしまい、買い出しをナランチャ一人に頼んでしまったのです。
結果、ナランチャは敵を撃退したものの、買い出しの品物は全焼。居場所を敵に知られそうになってしまいました。
反省したブチャラティはその後、任務に際し必ず複数の人間を割り当てるようになりました。*1
ビジネスの世界においても、仕事を複数人で担当することは大いにメリットがあります。
1つ目は、情報の共有が図れるということです。
「5−1」でも話しましたが、チームでは情報の共有は不可欠であり、誰が何の仕事をしているのかが分からない組織は組織として機能しなくなります。個人で仕事を抱えてしまうと報告を怠りがちになってしまい、結果、部下のアラームに気づかず、大事になってから問題が発覚する、ということが多々あります。複数人で仕事を行ない、常に目的や情報を共有することで報告の習慣が身につき、チームで問題に取り組むことが出来ます。
2つ目は、個々の得意分野を連携できる、ということです。
個人で仕事をしていると、本人のスキルの得手不得手により仕事の結果が左右されます。
複数の人間で業務に取り組むことにより、お互いの不得手な部分を補完することで、1+1が3にも4にもなるのです。実際、ブチャラティは「近距離」が得意なジョルノと「遠距離」が得意なミスタを組み合わせることで大いに成果を発揮しました。
3つ目に、バックアップとして機能する、ということです。
個人で仕事を行なう場合、仕事が属人的になってしまい、ノウハウは蓄積されません。複数人で仕事を行なうと上司は部下に教え、部下は上司から学びます。OJTとして部下は上司から仕事について様々なことを学びますし、上司は部下に教え、育て、伸ばす「コーチング能力」が身につきます。
また、仕事が属人的になった場合、担当する個人が病気や退社などでいなくなった場合、代わりに対応する人が存在しなくなります。一方で担当者も「オレがいないとこの仕事は進まない」と意識してしまい、気軽に休めず、結果、体調的にも精神的にも本人の重荷になってしまいます。当然ながら個人の忙しさには波がありますので、仕事を複数人でシェアすることで負荷を減らし、チームのモチベーションも向上させることができるのです。*2
ブチャラティは失敗を糧に「仕事を複数人で担当させる」というリーダーとして重要なことを学びました。
そしてその結果、以降の「仕事」は全て成功を収めました。
失敗から何を学ぶか、これもリーダーとして問われる素質であり、ブチャラティが素晴らしいリーダーである所以なのでもあります。
■ブローノ・ブチャラティに学ぶリーダー学(その4)