ブローノ・ブチャラティに学ぶリーダー学(その2)

■ブローノ・ブチャラティに学ぶリーダー学(その1)
 4日間に渡り「ブローノ・ブチャラティに学ぶリーダー学」と題し講義を行っております。
 本日は2回目の講義、「人材発掘…優秀な人材を部下にするためには」です。

4.人材発掘…優秀な人材を部下にするためには

 組織を構築するのは「人」であり、いかに優秀な人材を発掘するかがリーダーに問われる資質です。ブチャラティの3つのエピソードから、彼が行なっている人材発掘の方法について学んでみましょう。

4−1.グイード・ミスタの場合

 グイード・ミスタは暴行されていた女性を助けるためチンピラたちを射殺し、裁判で実刑判決を言い渡されました。
 この裁判の記事のなかに、「飛んでくる弾丸を避けながら自身の銃の弾を込めなおした」という彼の発言から射撃の才能を見抜いたブチャラティが手を回してミスタを釈放させ、彼は「試験」ののち組織に入団しました。

 ブチャラティのチームに入った後、ミスタはムードメーカーとしてチームを盛り上げ、そして彼の射撃の能力は幾度となくチームに貢献しました。



 良い人材を見出すためには不断の努力が必要です。
 ブチャラティはミスタを見出したように裁判の記事を読むなど情報のアンテナを幅広く広げ、なおかつ根気良く調査を行なっています。こういった地道な努力なくして優秀な人材を見つけることは不可能なのです。
 また、ブチャラティは裁判でのミスタの供述に彼の射撃の才能を見出しました。アンテナを広げ普段の努力を行い調査を行なっても、その人が持つ才能に気づかなければ意味がありません。ブチャラティは川の砂の中から砂金を見つけるが如く、キラリと光る彼の才能に気づくセンスを持っていたのです。
 ビジネスの世界でも同じことが言えます。よく、「部下は選べるが上司は選べない」と言いますが、優秀な部下を選ぶ(発掘する)ためには広いアンテナと地道な調査、そして才能に気付くセンスが必要なのです。

4−2.ナランチャ・ギルガの場合

 早くに母を亡くし、父から愛情を与えられなかった彼は、信頼していた親友に強盗の罪を着せられ少年院へ入れられてしまいます。
 出所して浮浪者となり、また病気を患っていた彼はブチャラティの部下であるパンナコッタ・フーゴに拾われ、ブチャラティたちの介護を受けることになります。

 ナランチャは恩返しとして自分もギャングにして欲しいと申し出ますが、安易にギャングの道に入ろうとしている彼にブチャラティは激怒します。

 家に帰されたナランチャですが、「何の関係も無いはずの自分に、マジになって怒ってくれた」と感じた彼は「ブチャラティとその仲間の為に働きたい」と思うようになり、恩に報いるため、秘密で「試験」を受け組織に入団し、彼の部下として働くことになります。



 「この人の元で働きたい!」と部下に思わせること、いわゆる「カリスマ性」というのはリーダーに必要な条件です。よく「仕事は出来るが人間として尊敬できない」上司がいますが、「仕事の能力が高ければ尊敬されるわけではない」という良い例かと思います。
 では、どのような人物が尊敬されるのでしょうか?
 浮浪者として街を徘徊していたナランチャをレストランに連れてきたのはブチャラティの部下、フーゴでした。「困っている人を助ける」というのは日ごろから意識として身に付いていないと出来ないことです。ブチャラティの意識がチームの雰囲気を彩っているのでしょう。チームの雰囲気というのはリーダーの資質そのものを問うていると言えます。
 ブチャラティは、「何の関係も無いはずのナランチャを、マジになって怒」りました。常に相手の立場に立って物事を考える。そして、相手が間違っているときは「叱る」のではなく、「怒る」。相手に「自分のことを考えてくれているんだ」と思わせないと、「怒り」は効果がありません。「自分が気に入らないから」という利己的な理由で部下を叱責する上司はリーダーとして失格です。当たり前のようですが、相手のことを我が身のように思う気持ち、これがリーダーに必要な資質なのです。

4−3.ジョルノ・ジョバァーナの場合

 ネアポリスでチンピラまがいのことをやっていたジョルノ・ジョバァーナはある日、その縄張りを取り仕切っている「涙目のルカ」とトラブルになります。誤ってルカを殺してしまったジョルノに対し、ブチャラティが尋問しに来ます。ブチャラティとの戦いののち、ジョルノは彼に「邪悪な行動を続けているパッショーネのボスを倒し、自らがパッショーネのボスになる」ことを告げます。ブチャラティはジョルノの黄金のような意志に共鳴し、彼をチームに引き入れました。

 彼はその後亡くなったブチャラティの遺志を継いで、最終的にボスを倒し組織のNo1に昇り詰めました。



 ジョルノは、もともとブチャラティの「敵」として存在していました。この場合の「敵」とは「利益を害するもの」という意味です。他部署とはいえ同じ組織の人間を1人殺されたのですから、明らかにジョルノはブチャラティにとって「排除すべき存在」だったでしょう。しかしながらジョルノと拳を交え、彼の「黄金の意志」を聞いたブチャラティは、結果として「敵」であった彼を部下として引き込むことにしました。
 「敵」を迎え入れるというのは、自身のもともとの信念を覆すということです。リーダーとして、また管理職として上に上がれば上がるほどプライドが邪魔をして自らの誤りを認めたくないものです。しかしながらブチャラティは自らの誤りを正し、ジョルノを部下にしました。この思い切りの良さは特筆に価するでしょう。
 ブチャラティがジョルノを部下にしたのは、ジョルノが彼に戦いで勝ったから、ということもありますが、ジョルノの「黄金の意志」に共感したことが大きな理由でしょう。人材を登用する際には「能力」だけでなく、その人の「志」も重要である、ということをその身で示したエピソードだといえます。
■ブローノ・ブチャラティに学ぶリーダー学(その3)
■ブローノ・ブチャラティに学ぶリーダー学(その4)