北野勇作『ウニバーサル・スタジオ』ハヤカワ文庫

ウニバーサル・スタジオ (ハヤカワ文庫JA)

ウニバーサル・スタジオ (ハヤカワ文庫JA)

新大阪の書店「談」(←日本で一番『慟哭(貫井徳郎)』が売れている書店)で山積みになっていました(笑)。

大阪をテーマにした楽しいアトラクションがあなたをお待ちしています。
巨大タコが襲う水上バスの刺激的なライド、四天王寺の亀の池ではカメ型メカとザリガニ型怪生物の痛快なバトル、通天閣からは軌道上イカリングへの魅惑のツアーにお連れします。
そして、阪神タイガース優勝を祝しての道頓堀ダイブも心ゆくまでどうぞ。
いや現実には、人類滅亡まで二度と優勝できなかったわけですが…。

めっちゃおもろかったでぇ。
(以下、関西弁で。やや読みやすく書いとぉから、ほんまの関西弁とちゃうかもしれんけど堪忍してなぁ)
まいど。フジモリ(大阪在住)です。
この作品は、ウニをモチーフにした「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」、通称「ウニバーサル・スタジオ」の表と裏、内と外を描いたSF小説や。
作者が関西出身、っちゅうこともあり、作中の「大阪」描写に非常にめっちゃリアリティがありよんねん。
タコがタコ焼きにされとぉ仲間の恨みを晴らすべく、明石から大阪までJR新快速に乗って御堂筋線の梅田で乗り換えて、んーで心斎橋で降りて道頓堀ぃ向こぉて戎橋のたもとから出よる水上バスを襲うシーンなんか、イメージが頭の中に浮かんでもぉてほんま、困ってまうわぁ。
んーで、なんで明石ぃ襲わへんかっちゅうと、明石はタコ焼きのことを「玉子焼き」言いよるからや、みたいな「非」関西人をやや置いてけぼりにしたネタは、関西在住なら一層楽しめる思うわ。
一方で「アトラクション」ちゅう「虚構」が「表」となるテーマパークの中で、アトラクションの「裏」で働くスタッフっちゅう「現実」をこれでもかっいぅぐらい対称的に描きよる。ウチらのいる「世界」は「虚構」なんか「現実」なんか、「表」なんか「裏」なんか、っちゅう「揺らぎ」を与えることに成功しとぉわ。
物語が進むうちに「ウニバーサル・スタジオ」の「外」についても書かれんねんけど、これも読みすすめるうちに「外」と「内」がわからんくなる。ほんま、くらくらするわ。
イロモノSF、いぅて高ぁくくって読むとびっくりするで、ほんま。
とはいぅもののいつもの北野勇作節のとぼけた筆致で、なんやわからんけどおもろいなぁ、ちゅう気持ちにさせられる。
大阪らしくコテコテのネタが多いけど、SF好きにも楽しめる一作やわ。
こぉいった「ご当地SF」ちゅうのもおもろいかもしれんなぁ。ほかの地方でも出してくれんかなぁ。
あと、他の北野勇作作品を読んだら一層楽しめるかもしれんので、この本を気に入ったら他の作品も読んでみてやぁ。
んなとこかなぁ。いやぁ、関西弁で感想書くとしんどいわぁ。まあ、自分、大阪弁神戸弁がめっちゃ混ざりよんねんけどね。

もぉええわ。