川口盛之助『オタクで女の子な国のモノづくり』講談社BIZ

 次期首相の呼び声高い旬の人、ローゼン麻生太郎幹事長がオビに推薦文を書かれています。

 本書は、これまで日本が目指してきたマッチョイズム溢れる「欧米的な」モノづくりではなく、「オタクで女の子的な」日本の文化から「オンリーワン」のモノづくりが出来る、と説いています。本文で日本製品の「オタクっぽさ」「女の子っぽさ」を「十の法則」にまとめています。
(1)擬人化が好き
(2)個人カスタマイズを志向する
(3)人を病みつきにさせる
(4)寸止めを狙う
(5)かすがいの働きをする
(6)「恥ずかしさ」への対策となる
(7)健康長寿を追求する
(8)生活の劇場化を目指す
(9)地球環境を思いやる
(10)ダウンサイジングを図る

 これらの考え方は日本人にとっては普通でも、外国人から見ると非常に「ユニーク」なものだそうです。例えば、便座を暖める装置、大と小によって流す水の量を変えるレバー、こういったギミックは古来より洋式便器を使ってきた外国人でもなかった発想なのだとか。
本書ではこれまで日本が学んできた「欧米式のモノづくり」を踏まえたうえで、「どうやって(How)」作るかではなく「何を(What)」作るかということが今後重要になると語り、そのための「オタクで女の子な」日本独特の考え方がその鍵を握るとしています。
一部で牽強付会な論旨が見受けられるものの、「日本人独特の考え方に基づいた製品」の説明を読むうちに「なるほど」と頷いてしまいます。
 本書では本来卑下されるべき「オタク」的、「女の子」的な考え方を終始肯定しています。例えばロボット。姿形や動作が人間に限りなく近づくことで逆に「生理的な嫌悪感」を与えてしまうロボットも、「アニメ的な」容姿にすることで気持ち悪さを軽減させることができます。一方で、バイクのライトを「人間が起こっている顔」に似せ「擬人化」することで対向車線のドライバーの注意を覚醒させることが出来ます。
 子供のころからマンガやアニメ、ゲームといった「オタク」文化に親しんでいる日本人だからこそできる発想、それを客観的に説明してくれる本書は、現在「モノづくり」に携わる人に特に読んでほしい一冊だと思います。
 まあ、これから日本は「美しい国」ではなく「オタクしい国」になっていくかもしれませんしね!(笑)
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オタクで女の子な国のモノづくり (講談社BIZ)

オタクで女の子な国のモノづくり (講談社BIZ)