『Q.E.D.-証明終了- 27 』(加藤元浩/月刊マガジンコミックス)

Q.E.D.証明終了(27) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.証明終了(27) (講談社コミックス月刊マガジン)

 大人気ミステリ漫画、『Q.E.D.』シリーズの27巻です。……って、ごめんなさい。実は私、ミステリの小説はよく読むのですが漫画はからっきしでして、このシリーズを読むのもこれが初めてだったりします。ホントすいません(汗)。
 じゃあ、なぜいきなり27巻に手を出したのかといいますと、帯の謳い文句本格ミステリ裁判員制度を攻略!! 誰よりも早く、詳しく裁判員制度の達人へ!に釣られたからです(笑)。本書には『鏡像』と『立証責任』の2つの話が収録されています。そのうち、『立証責任』が裁判員制度を扱ったミステリです。
 運良く(悪く?)学校行事での模擬裁判の裁判員に選ばれたシリーズの探偵役とワトソン役が、実際にあった(と作中ではされている)強盗致死傷事件を題材に有罪・無罪を判断するというお話です。判決を下すために裁判員が守らなければいけない3つの基本ルール、1.無罪推定の原則2.被告人の有罪を証明する全責任は検察側にある3.有罪とするには「合理的疑いを超えて証明すればよい」を最初に提示します。そこから、立証と反証、「黙秘権」の行使、(検察側の)誘導尋問の禁止といった法廷ミステリにありがちなやり取りがなされます。さらに、直接証拠と状況証拠の違いとその微妙さといった証拠能力の問題にまで踏み込んでくれてますので、シンプルながらも裁判員の役割をとても丁寧かつ簡明に説明してくれててとても好感が持てます。その上さらに、このお話では最後にミステリ的な推理が披露されるのですが、これが実に良くできてて驚かされました。主人公の下した判断は法廷ミステリならではのもので、これを読むことができたのは望外の幸運でした。なお、日本の裁判員制度での多数決の方法(裁判官3人、裁判員6人での多数決。ただし多数側に1人でも裁判官がいないとその票決は無効)は、恥ずかしながら知らなかったので(汗)、併せて勉強になりました。
 ちなみに、他にも裁判員制度を扱っている漫画として、『裁いてみましょ。』(きら/クイーンズコミックス)というのがあります。こちらは女性裁判官が主人公で全五話、丸々一冊裁判員制度の問題を扱っています。裁判員と裁判官の関係、裁判員の適正、裁判員と被告人、もしくは被害者との関係、死刑判決の難しさといったものが描かれていて、興味のある方にはこちらもオススメです。
 もう1つのお話である『鏡像』もなかなか面白かったです。双子の容疑者と鏡の問題。この鏡の左右と上下の問題は、森博嗣の『笑わない数学者』を読んだりしてそのときは納得するのですが、少し経つとすぐに忘れてしまって、「どうしてだったかなぁ?」と懲りずに不思議に思うのは我ながら先入観を排除することができなくて呆れてしまいます。もっとも、だからこそミステリを読んで毎度毎度騙されるという喜びを味わえるのでしょうけどね(笑)。
裁いてみましょ。 (クイーンズコミックス)

裁いてみましょ。 (クイーンズコミックス)

笑わない数学者 MATHEMATICAL GOODBYE (講談社文庫)

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