『五日性滅亡シンドローム 1』(ヤス/芳文社)

五日性滅亡シンドローム (1) (まんがタイムKRコミックス)

五日性滅亡シンドローム (1) (まんがタイムKRコミックス)

 『わたしたちの田村くん』などのライトノベルイラストレーターとして知られる著者の初コミック作品です(サイトはこちら)。
 5日で世界が終わるという噂が流れている世界での学校生活を描いたカウントダウン・ストーリー4コマです。本書では『不二編』と『死神編』が収録されています。
 イラストだとホントに綺麗だと思うのですが、こうして4コマになったのを見るとなにかが足りないような気がします。おそらく、キャラ絵の輪郭が細すぎて4コマの枠線に負けちゃってるからじゃないかと思います。あと、あとがきで「ライトノベルっぽい感じになっちゃいましたね」というのは確かにその通りで、裏を返せば漫画らしさを出すのに苦労したと言えます。実際、このコマとこのコマは一つのコマにして最後にちゃんとしたオチのコマが欲しいなぁ、と感じたのが幾つかありました(←嫌な読者)。
 しかし、面白かったです。いや、2編のうちファンタジー色の強い『死神編』は正直イマイチでしたが、『不二編』は面白かったです(この設定ならリアルなのが読みたいです)。今の若い人にこんなこと言っても分かってもらえないかもしれませんが、その昔、ノストラダムスの大予言(→Wikipedia)なるものがもてはやされた時代があったのです。いや、私も馬鹿らしくて現物を観たことはないのでよく分からないのですが、とにかく、1999年7の月に世界が滅亡する、みたいな話が広範囲で噂となったのです。日本でもそれなりに話題になりましたし、極悪カルト集団として知られるオウム真理教にも終末思想として影響を及ぼしたらしいです。フランスとかだとそれなりに騒ぎになったみたいです(私もよく知りませんが)。ノストラダムスの予言を信じるのは馬鹿馬鹿しいことです。しかし、世界が滅亡する、という恐れ自体に根拠がなかったわけではありません。宇宙から巨大隕石が落ちてくるかもしれませんし、環境破壊は予想のつかないスピードで進んでいますし、最終核戦争だっていつ起きてもおかしくありません。ですから、「世界が滅亡するのかな?」と聞かれたら「かもね」と正直に答えたくなるところではありますが、ノストラダムスの予言馬鹿のおかげで「滅びるわけねーだろ」と答えざるを得なかったのがパラドキシカルで面白かったのを覚えています。
 そんなわけで、『不二編』は昔の自分たちの姿というか会話が思い出されるというかシンクロしちゃう部分がありまして客観的に評価しづらいものがあるのですが、とにかく面白かったです。もっとも、私たちの場合は、もし世界が滅びるのだったら銀行から大金でも盗み出すかな、みたいな馬鹿話をしてましたけどね(笑)。世界が滅びようが滅ぶまいが人間いつかは死ぬわけで、カウントダウン・ストーリーにはそんな人生観も絡まずにはいられなくて、だけどそれより直球ラブコメの方が重要なのは至極当然で、その辺のバランス感はとても心地よかったです。2巻以降ではもっと黒い話が読めればな、と思います(笑)。
 タイトルの5日性って月曜日から金曜日のことなのでしょうが、ひょっとして”一過性”とかかってたりします?(笑) それはともかく、まだまだ応用の利く設定だと思うので次が楽しみです。