二人称小説一覧
●二人称小説一覧(→新版)
◆ミシェル・ビュトール(清水徹・訳)『心変わり』岩波文庫(1957)長編:全編「きみ」
◆倉橋由美子『暗い旅』新潮文庫(1961)長編:全編「あなた」
◆都筑道夫『やぶにらみの時計』光文社文庫(1961)長編:全編「きみ」
◆シオドア・スタージョン(山本光伸・訳)『きみの血を(書評)』ハヤカワ文庫(1961)長編:最初と最後だけ「あなた」
◆ジーン・ウルフ(伊藤典夫・訳)『デス博士の島その他の物語』(1970)中編(国書刊行会『デス博士の島その他の物語』収録):大体「きみ」
◆阿部公房『箱男』新潮文庫(1973)長編:ほんの一部(《Cの場合》)だけ「君」
◆山口雅也『『あなたが目撃者です』』(1994)短編(講談社文庫『ミステリーズ《完全版》[現在品切れ]』収録):全編「あなた」
◆北村薫『ターン』新潮文庫(1997)長編:5分の3くらい(←適当)「君」。他、一人称「わたし」など
◆法月綸太郎『二の悲劇』祥伝社文庫(1997)長編:一部「きみ」。他に一人称と三人称が混在
◆高行健(飯塚容・訳)『ある男の聖書』集英社(1999)長編:全編「おまえ」
◆多和田葉子『容疑者の夜行列車』青土社(2002)長編:全13章中約12章「あなた」
◆重松清『疾走』角川文庫上下巻(2003)長編:全編「おまえ」
◆ローリー・リン・ドラモンド(駒月雅子・訳)『銃の掃除』(2004)短編(ハヤカワ・ミステリ『あなたに不利な証拠として(書評)』収録):全編「あなた」
◆式田ティエン『沈むさかな』宝島社文庫(2004)長編:全編「きみ」
◆浅暮三文『穴』『これはあとがきではない』(2005)共に短編(光文社文庫『実験小説ぬ』収録):両者とも「あなた」
他にもあったように思いますが、とりあえず思い出せるのはこんなところです(思い出したら追加します)。
いかにもいい加減で、絶対に穴もあると思うので、どなたか完全版を作ってくれたらいいと思うよ。
ちなみに、数字は作品の初出年ですので、書籍の刊行年とはズレてますのでお気をつけ下さい。
倉橋由美子『暗い旅』と竹本健治『カケスはカケスの森』も二人称小説らしいのですが、読んだことがないので分かりません。欲しいなー。
ゲームブックは二人称のものが多いですが、小説と言えるかどうか異論もあり得るところなので今回は除外しておきました。
『心変わり』はおそらく二人称小説の先駆けだと思うので外せないのですが、今回紹介した中でもっとも読みにくく、かつ、つまらないと思います(笑)。
多和田葉子は現在『ユリイカ』で二人称の小説を連載してると思います(タイトルは忘れました)。
高行健は中国生まれの作家で(今はフランス国籍?)2000年にノーベル文学賞を受賞しています。
一番のオススメは『銃の掃除』。これはスゴイですよ。
語り口調で二人称小説と紛らわしいときがあります。例えば、金色の地球外生命体が「あなたはそこにいますか?」と問いかけてきても、テーマ的にはともかく、問われているのは作中の登場人物なのでここでいう二人称ではありません。
また、登場人物の自問自答の描写も紛らわしいです。『涼宮ハルヒの消失』238ページの5行目は二人称と考えても良いようにも思いますが、けどやっぱり違うと思います……いや、やっぱり二人称?(自信はない、てゆーか微妙)
二人称小説というのは確かに特殊だと思いますが、短編だったらもっとありそうな気もします。かくいう私も、恥ずかしながら二人称のショートショートを書いたことがあります(→これの四話目)。
上記の他にも、こんな二人称小説があるよ、というのに心当たりのある方がいらっしゃいましたら、ゲストブック等で教えて頂けたら大変有難いです。
【追記 2007・01・07】
その後、『暗い旅』を古本で入手することができましたので、表の中に追加しました。『暗い旅』には、「作者からあなたに」という”あとがき”があります。その中で、二人称を使った理由が説明されています。
とはいえ、わたしはこの小説ではわたし自身に関係のあることがらを多く利用しています。しかしこれがいわゆる自伝的小説ではないのは、たんにわたしの体験にデフォルマシオンが加えられているからではなく、わたしがあなたにおきかえられているからなのです。これはあなたを遠隔操作するための装置ともいえます。あなたはこれまでのように作者から一方的にある物語を語りきかされるかわりに、小説の中に招待され、参加することになるでしょう。そこであなたはいろんなことを考え、あなたの過去をおもいだしながら行動していくことになります。
読者が小説の中に招待されるのは、別に二人称に限らずどんな形式の小説であっても、程度の差はあるかもしれませんが、共通のことだと思います。にもかかわらず、倉橋由美子が二人称を用いた理由をそのように説明したのはなぜか? それは、わたし自身に関係があることがらを多く利用している、ことの裏返しだと思います。すなわち、この小説はあなたがお察しのとおり自伝的なものであることは認めますが、それでもこれは小説なので、どうかメタな読み方をしないで、ひとつの小説として読んで下さいというのが、この「作者からあなたに」というあとがきの真意じゃないかと思います。根拠レスですけどね(笑)。
(以下、書誌情報)
- 作者: ミシェル・ビュトール,清水徹
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2005/11/16
- メディア: 文庫
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- 作者: 倉橋由美子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1977/07/01
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 4回
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- 作者: 都筑道夫
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2003/12/09
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- 作者: シオドアスタージョン,Theodore Sturgeon,山本光伸
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2003/01
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- 作者: 安部公房
- 出版社/メーカー: 新潮社
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- 作者: 山口雅也
- 出版社/メーカー: 講談社
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- 作者: 北村薫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/06/28
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- 作者: 法月綸太郎
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- 作者: 高行健,飯塚容
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- 作者: 多和田葉子
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- 作者: 重松清
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- 作者: ローリー・リンドラモンド,駒月雅子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/02/08
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- 作者: 式田ティエン
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- 作者: 浅暮三文
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