私家版2008年SF ベスト10

 年末ですので書評サイトらしく一応2008年のベストSFなんぞを挙げてみます。ちなみに私家版ですので、刊行年数などにかかわらず私が2008年に読んだ本の中から選ばせていただきましたのであしからず(順位も付けていません)。

海を失った男

海を失った男 (河出文庫)

海を失った男 (河出文庫)

 語りの魔術師と呼ばれるスタージョンの短編集。アルジャーノンの先駆作ともいえる『成熟』が印象に残っています。
【関連】『海を失った男』(シオドア・スタージョン/河出文庫) - 三軒茶屋 別館

ひとめあなたに…

ひとめあなたに… (創元SF文庫)

ひとめあなたに… (創元SF文庫)

 新井素子の名作の復刊。破滅のなかの狂気をつづる独特の文体が脳内に焼きついています。
【関連】『ひとめあなたに…』(新井素子/創元SF文庫) - 三軒茶屋 別館

ハローサマー、グッドバイ

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

 名作が新訳で復刊。今年のベストとして挙げてる人も多いみたいですが、やっぱり外すわけにはいきません。少年と少女のひと夏の思い出を描いた物語は、SFというジャンルを越えて読み手を選ばない傑作です。
【関連】『ハローサマー、グッドバイ』(マイクル・コーニイ/河出文庫) - 三軒茶屋 別館

マイナス・ゼロ

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

マイナス・ゼロ (集英社文庫)

 タイムトラベルものの傑作として存在だけは知っていましたが、この度の復刊によってめでたく読むことができました。昭和初期の日本の様子が生き生きと描かれています。そんな読書体験自体が一種のタイムトラベルだといえるでしょう。
【関連】『マイナス・ゼロ』(広瀬正/集英社文庫) - 三軒茶屋 別館

ツィス

ツィス 広瀬正・小説全集・2 (広瀬正・小説全集) (集英社文庫)

ツィス 広瀬正・小説全集・2 (広瀬正・小説全集) (集英社文庫)

 広瀬正の復刊作品の中からもう一冊。同じ作者の作品の紹介は一作にとどめようと思ってましたが、こればかりは仕方ありません。小説だからこそ表現可能な結末に脱帽です。
【関連】『ツィス』(広瀬正/集英社文庫) - 三軒茶屋 別館

フリーランチの時代

フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫JA)

フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫JA)

 小川一水のSF短編集。現実とモラルの界面にSFとしての着想の根本があるのが魅力なのだと思います。
【関連】『フリーランチの時代』(小川一水/ハヤカワ文庫) - 三軒茶屋 別館

宇宙飛行士ピルクス物語

宇宙飛行士ピルクス物語(上) (ハヤカワ文庫SF)

宇宙飛行士ピルクス物語(上) (ハヤカワ文庫SF)

宇宙飛行士ピルクス物語(下) (ハヤカワ文庫SF)

宇宙飛行士ピルクス物語(下) (ハヤカワ文庫SF)

 古本の価格が馬鹿みたいなことになってましたから、この復刊は本当に助かりました。レムの作品はすべて復刊されるべきだと思いますので、早川さんには今後も期待しています。何卒よろしくお願いします(ペコリ)。
【関連】『宇宙飛行士ピルクス物語』(スタニスワフ・レム/ハヤカワ文庫) - 三軒茶屋 別館

彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス

彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス (ハヤカワ文庫SF)

彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス (ハヤカワ文庫SF)

 指揮系統や艦長間の人間関係などを綿密に描きながら繰り広げられる艦隊戦は、銀英伝ファンなら楽しめること間違いなしです。SF的な大風呂敷も用意されているみたいですし続刊が待たれます。
【関連】『彷徨える艦隊 旗艦ドーントレス』(ジャック・キャンベル/ハヤカワ文庫) - 三軒茶屋 別館

回帰祭

回帰祭 (ハヤカワ文庫JA)

回帰祭 (ハヤカワ文庫JA)

 なぜウナギ? そんな小林めぐみらしい妙ちくりんな発想で描かれているSFは、青春ものとしての爽やかさと苦味も堪能できます。
【関連】『回帰祭』(小林めぐみ/ハヤカワ文庫) - 三軒茶屋 別館

エンジン・サマー

エンジン・サマー (扶桑社ミステリー)

エンジン・サマー (扶桑社ミステリー)

 物語ることを物語る物語。主人公の少年の成長と共に色鮮やかになっていく世界の姿。そして意外な結末。『ハローサマー、グッドバイ』と一緒に押さえておきたい傑作青春SFです。
【関連】『エンジン・サマー』(ジョン・クロウリー/扶桑社ミステリー) - 三軒茶屋 別館


 ご覧の通り、古典の復刊ばかりになってしまいました。私はミステリ読みですからSFの流行を積極的に切り開いていこうなんて気持ちは微塵もありやしませんが、「それにしても…」と思わないでもありません。来年はもう少し冒険してみたいですね。