「おカネ」と「地震」のリアルなエッセイマンガ。 中村珍『アヴァール戦記』
- 作者: 中村珍
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/01/07
- メディア: コミック
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『羣青』など濃ゆい漫画を描いています中村珍によるエッセイマンガです。
初めて舞い込んだエッセイマンガの依頼。「アヴァール=(フランス語で)ケチ」な作者が日々のケチを綴るエッセイ・・・と思いきや、確かにページ単価やアシスタント代などかなり突っ込んだネタを盛り込んでいるものの、なかなかしっかりした「漫画家マンガ」でした。
私 このマンガ描いてる時
時給換算7万8千円です!!
(P15)
と、エッセイマンガである本書は、序盤は作者が漫画を描いているエピソードを「ケチ」をキーワードに面白おかしく描くなどかなりエグい内容でした。
こんなこと描かれるとコピーや見開き真っ黒や文字だけのページなんかがあったばあい勘ぐっちゃいますよね(笑)。
とはいうものの、アシスタントが良い出来だった場合晩御飯は豪華に、などと(逆に悪い出来の場合カップラーメン)「マンガ」に対する真摯な姿勢が垣間見れてこれはこれで面白かったです。
しかしながらこの漫画が大きなうねりを見せるのが、3.11の震災を経験したこと。
事務所は上の階からの漏水で使い物にならなくなるものの、締め切りは無情にも迫る。
余震におびえながら小学館編集部にてアシスタントを集め漫画を描く作者。
「あの時に漫画家がどうしたのか」を鮮明に記録する貴重な資料であり、まさに「プロ根性」を感じるエピソードでした。
いーんですよ漫画家なんてのは
一個人として辛かったことを
世間に切り売りして元を取るんです。
私の身に起きた地震について描くことで
地震のせいで私が被った損害額を 少しでも取り返せるなら私は描きます
(P60)
うん、「ケチ」というより、「プロ根性」を感じるエッセイマンガです。