「もしドラ」にイマイチのれない人たちに。 別冊宝島「まんがと図解でわかるドラッカーのリーダーシップ論」
もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
- 作者: 岩崎夏海
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2009/12/04
- メディア: 単行本
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内容は「野球部」という青春ものに「ドラッカーの『マネジメント』」というビジネス書を(あるいはその逆もまたしかり)うまくとりこんだ、久米田康治『勝手に改蔵』で言えば「錬金術」な作品(←リンク参照)。見事なブルーオーシャン戦略で大ヒットするのも頷けます。
とはいうものの、正直、フジモリは作品が出た当時からいまいちノりきれないところがあり、ドラッカー『マネジメント』には興味を持つもののなんとなく敬遠していました。
これは極私的な分析なのですが、「もしドラ」がヒットした要因の一つとして、読者層が
・「ドラッカー」を読んだことがないが「マネジメント」を必要とされる20代から40代の層
・営業職をはじめとする「体育会系」色が強い層
という『マネジメント』を潜在ニーズとしている層に、「野球部」という体育会系パッケージをラッピングすることで間口を広げたというところが大きいと思っています。
体育会系だけでなく、著者が意識したあだち充『タッチ』など高校野球をマンガなどで身近に感じている層も掬いとっているとは思いますが、とにかく、どちらかというと「体育会系」のお話なのです。(当たり前ですが)
そういう意味で日の光がまぶしい文化系男子には「流行ってる」だけでも敬遠するのに「体育会系」なイメージでますます遠ざかっているというのが正直なところです。
とはいうものの「「もしドラ」は敬遠気味だけど、「マネジメント」には興味があるんだからね!」というツンデレなフジモリにとって、「ドラッカー」ブームに便乗した別冊宝島のムックはけっこうありがたかったりしました。
まんがと図解でわかるドラッカー マネジメント、イノベーションなどが初心者でも簡単に理解できる! (別冊宝島) (別冊宝島 1710 スタディー)
- 作者: 藤屋伸二
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2010/11/18
- メディア: 大型本
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どちらかというと解説メインでマンガ部分はおまけのようなもの。それが逆に「マネジメント」のエッセンスを分かりやすく説明されていて読んでためになりました。
そして三匹目のドジョウである「まんがと図解でわかるドラッカーのリーダーシップ論」が発売されました。
まんがと図解でわかるドラッカーのリーダーシップ論 (別冊宝島) (別冊宝島 1750 スタディー)
- 作者: 藤屋伸二
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2011/04/12
- メディア: 大型本
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ポジとネガのごとく、「もしドラ」=体育会系=野球部の裏面として、「まんがと〜」=文化系=弱小吹奏楽部の部長がドラッカーさん(幽霊)の助言に従い「マネジメント」の教えに乗っ取り部をまとめあげていきます。
けっこうマンガ部分はしっかり書かれてますし、吹奏楽部を組織として見たときの「マネジメント」との相性は良く、なんといっても「文化系」な自分にとってはドストライクな内容です。
余談ですが、以前フジモリが取り上げ微妙に流行らせようとして失敗した*1「チューバ娘」もこのマンガに登場します。
表紙の端っこに描かれているもののいかにもな脇役キャラ、そしていまいちアンサンブルで足を引っ張るグズっ娘属性ですが、彼女も部長の力で成長していきます。
実際、ブラバン漫画の書評*2でも書きましたが、ブラバンやオーケストラという「団体競技」はスポーツと根っこは一緒で、個々のレベルアップをしながら「組織」として成果を出すことが求められます。
そういう意味で、「もし吹奏楽部の部長がドラッカーの『マネジメント』を読んだら」でもよかったわけで、でもそれだったらこれほど大ヒットしてないだろうなあ、などといろいろなことを考えたりしました。
フジモリのように、「もしドラ」にほのかに漂う体育会系臭にアレルギーを持つようであれば裏口であるこちらの本からドラッカーに入門するのもおもしろいかもしれません。ムックだといって侮れない一冊です。
- 作者: ピーター・F・ドラッカー,上田惇生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2001/12/14
- メディア: 単行本
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*1:チューバ娘に関する記事は以下参照。「チューバ娘に花束を」 http://d.hatena.ne.jp/sangencyaya/20090424/1240499576 「私的チューバ娘ランキングベスト5」 http://d.hatena.ne.jp/sangencyaya/20090423/1240412516
*2:例えば、宇佐悠一郎『放課後ウインド・オーケストラ』 http://d.hatena.ne.jp/sangencyaya/20090407/1239056402