田川ちょこ『ひかるファンファーレ』芳文社

- 作者: 田川ちょこ
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2009/03/07
- メディア: コミック
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ストーリーですが、くだくだ説明するよりも「4コマ漫画の計は1話目にあり」(フジモリ造語)というわけでこの4コマを読んでいただければ把握できるかと。

吹奏楽部に入った女子高生・ひかるが、身の丈ほどもある巨大な楽器・チューバを吹くことになり、それによって引き起こされる面白エピソードを描いています。
瀬川深『チューバはうたう』でもご紹介しましたが、チューバという楽器は金管楽器の中で最も大きく最も低い音を出す、縁の下の力持ち的な楽器です。
チューバという楽器をご存知だろうか?
金管楽器。でかい、重い、音がやたらに低い。
金色の光沢を放つウミヘビがぐるぐるととぐろを巻いて、コンパクトに……まとまってるとは、とても言えない。身の丈一メートル余り、重量十キロ超。幼児よりも大きい。抱えればこちらにのしかかってくる。持って振り回せば、武器になること間違いない。(p5)
●瀬川深『チューバはうたう mitTuba』筑摩書房 - 三軒茶屋 別館
持ち運ぶだけでも一苦労、旋律は単調なベース音、と面白エピソードを挙げれば枚挙に暇がありません。おそらく元チューバ吹きだった作者の実体験もあるのでしょう。小説『チューバはうたう』さながら、チューバに対する愛情と哀愁の両面をユーモラスに描いています。
例えば、会場に移動する際にトラックの荷台に積まれるエピソード。

吹奏楽部経験者にとっては「あるある」ネタであり、全く知らない人にとっては普通に面白エピソードです。こういった両面から楽しめるのも文化部系マンガの醍醐味かもしれません。
ひかるとチューバとのエピソードだけではなく、合宿したり、コンクールに出たりと、いわゆる「吹奏楽部」の生態についてもしっかりと描写されています。これもまた、経験者にとっては懐かしさを誘いますし、未経験者も疑似体験できると思います。
ただ、こういった面白エピソードを重ねながらも、主人公・ひかるのチューバに対する愛情や音楽に対するひたむきな気持ちというのは感じられます。

「日常」に軸足を置きながらも、主人公の成長やほのかな恋の萌芽を描くなど、ストーリー要素もバランス良くまぶされています。
音楽部活の「あるある」漫画として読むもよし、過ぎ去った学生生活を鬱になりながら思い出すもよし、と様々な楽しみ方ができます。
「音楽部活漫画をまず1冊他人に勧めるなら?」
そんな問いに応えられそうな1冊だなぁ、と思いました。