『曲矢さんのエア彼氏 2』(中村九郎/ガガガ文庫)

曲矢さんのエア彼氏 2 (ガガガ文庫)

曲矢さんのエア彼氏 2 (ガガガ文庫)

 わかるような、わからない理屈だ。
 ていうかわからない理屈なんだと思う。しかしこの理屈を、「わかるような」って感じる人間がエアリアルなんじゃないだろうか。エアなんてそもそも存在しないのだ。
 存在しないエアの理屈が「わかるような」気になってしまったら最後――。
 見えちゃうし、感じちゃうんだ。
(本書p33より)

 エア彼氏エア彼女なんていうといかにも痛々しいですが、しかしながら、理想の彼氏彼女を妄想することくらいは取り立てて大騒ぎするようなことでもないでしょう。好きなタイプは?性格は?身長は?職業は?といった”設定”を細かく決めて理想の異性を追い求める。もちろん理想と現実の間にはギャップがありますが、それはお互い様であって、それらを互いに埋めあって認め合うことで理解し合う。それが「現実的」というものでしょう。
 なので、木村のエア彼女である杏子を拉致した(?)曲矢が、その杏子を木村のクラスメイトである小沢の中に監禁した(?)とか言い出して、そしたら小沢が杏子の真似をし始めた(?)という超展開*1も、そうした理想から現実を受け入れていくパターンとしての文脈であれば十分に理解できるなぁ。……とか思ってたら全然違う方向にお話は進み出しちゃって、やっぱり中村九郎中村九郎なのだということをつくづく思い知らされました。
 とはいえ、木村が曲矢の中に、曲矢が木村の中に、それぞれエア彼女エア彼氏を見い出してくっつくというのがもっとも座りのいいオチだと思うので、いずれはそうした方向に進むのではないかとは思うのですが、なにせ中村九郎のことですし……。一体どうなるのでしょうね?(苦笑)
 一章でエア業界に組織があるとか言い出して、そういえば十字軍時代がどうとかとエアの歴史について語りだしたので、もしかしたら神=エアで信者=エアリアル、といったところまで踏み込むのかな?と思ったら、(少なくとも本書では)そういった方向には全然進まなかったので、それは正直拍子抜けでした。次巻以降(出るのか?)に期待です。いや、期待しながらいうのもなんですが、期待どおりになってしまったらそれはそれで残念な気もするのが中村九郎の魅力というか困ったところというか、つまり何が何やらよく分からないのです。分かりませんが、とにもかくにも続きを楽しみにしたいと思います(笑)。
【関連】
http://ga3.gagaga-lululu.jp/write/2009/11/100_1.html
『曲矢さんのエア彼氏』(中村九郎/ガガガ文庫) - 三軒茶屋 別館
『曲矢さんのエア彼氏 3』(中村九郎/ガガガ文庫) - 三軒茶屋 別館

*1:中村九郎の作品を表現するに当たっては何も言ってないに等しい言葉だという自覚はあります(苦笑)。