柏木ハルコ『ブラブラバンバン』小学館
- 作者: 柏木ハルコ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1999/11
- メディア: コミック
- クリック: 29回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
中学校時代に非モテのイマイチくんだったトランペットの白波瀬歩。心機一転高校で頑張ろうと決意する春休みの最中、公園で「ボレロ」を延々と吹き続けるホルンの少女・芹生百合子と出逢う。実は彼女はテンションが上がると「ある状態」になってしまう癖を持っていて。。。というお話です。
舞台は高校の吹奏楽部。潰れかけていた吹奏楽部を、芹生はじめ数名の団員が全国大会に出られるまで立て直します。
しかしながら、物語を推進していく原動力は「ブラバンラブ!」な団員の結束ではなく、「いい演奏だと欲情してしまう芹生の性癖」という、まさに「これなんてエロゲ?」なお話です(笑)。
この芹生の性癖、「いい演奏」であることが条件のため、「役得に預かりたい」男子部員や「本当かどうか確かめたい」女子部員などそれぞれの思惑が絡みながらも部員たちが「いい演奏」を目指します。
実際、吹奏楽そのものを描くところは意外と地に足がついた描写をしており、例えば野外で練習をしていたときに突風で楽譜が飛ばされたときのこと。
楽譜から目を離し指揮者を全員が注目した瞬間、「音楽」が1つステップアップするなど、経験者なら思わず頷いてしまうシーンです。
この漫画で感心したのは、「音楽」のレベルの表現です。
これは後日、他の作品と併せて考察する予定ですが、漫画という無音の媒体において「音楽」を表現する方法は
(1)擬音
(2)画面効果
(3)観客の反応
の3種類あるかと思います。
この漫画では、(3)の亜流として「芹生百合子のエロゲージ」を用いており、あたかもグルメ漫画で食した人のリアクションがコミカルに描かれるが如く、「巧い」演奏を芹生の欲情の進行度合いで表現しています。
一見、イロモノのように思える設定を、「演奏の凄さを伝えることが難しい」という音楽漫画の弱点を補完し物語を引っ張っていく手腕は面白いなぁ、と唸らされました。
題材が題材なだけに万人に勧めることは躊躇してしまいますが、興味を持たれた方にはこっそりと読んでいただきたいブラバン漫画です。