『青空エール』が描くもうひとつの「高校野球」

青空エール 3 (マーガレットコミックス)

青空エール 3 (マーガレットコミックス)

河原和音青空エール』3巻が発売になりました。
最近のマンガのなかでは個人的にかなり注目しているのですが、3巻でさらに急上昇。いやー、よかったです。
河原和音『青空エール』集英社 - 三軒茶屋 別館
これまでのあらすじは以前のフジモリの記事をご参照いただきたく、今回は3巻の内容にややふれながらこのマンガの魅力についてつらつら語りたいと思います。
2巻では定期演奏会で痛恨の出来事をしてしまった主人公・つばさですが、その失敗や心の傷を乗り越え、3巻では大介の甲子園予選に舞台が切り替わります。これまでコンサートという「演奏」をメインとしてきた白翔高校吹奏楽部ですが、今回は「応援」という立場で活動することになります。
主人公・つばさの夢は、吹奏楽部に入りトランペットで甲子園の応援をすること。北海道の支部予選決勝という舞台でその夢に一歩近づきます。
初心者で引っ込み思案な彼女を支えているのが、同じく「野球部に入って甲子園を目指す」夢を持つ同級生の大介。まっすぐでひたむきな彼の一言一言に、つばさは励まされ続けます。
いつしか、彼女の夢描く舞台には「甲子園にいる大介」も立つことになります。彼女の夢は大介の夢でもあり、二人はお互いの夢を応援し、自らの夢を叶えるための糧としていくのです。
この二人の相支関係が読者の心を爽やかにさせ、同時に胸を打ちます。うう、心汚れたウチには眩しすぎるんや。。。
高校野球」を描くマンガは、当たり前と言えば当たり前ですが球児たちが主役になります。しかしながら、こういった「応援する側」の視点から物語を紡ぐことでまた新たな発見がありますし、彼女の視点に合わせ、読者も「チーム」以上に「彼」を注視していくことになるでしょう。
高校野球」という題材はそれこそ昔から様々なマンガになっていますが、「球児を応援する」主人公を据えることで、また違った色彩になる、ということ知り大変興味深かったです。
未読のかた向けにこの巻の展開は語りませんが、この巻でも二人は努力し、つらい出来事に遭い、それでも前を向こうと努力します。最後のやりとりは思わず涙腺がゆるんでしまいますし、読後にはますます「二人」を応援したくなることうけあいです。
「応援する側のドラマ」、この夏の甲子園ではそういった視点から高校野球を観るとさらにおもしろくなるのかもしれません。
ブラバンマンガとしても、高校野球マンガとしても良質のマンガだと思いますので、未読のかたはタイムリーなこの時期に是非ご一読することをオススメします。

余談ですが、以前たけいが勧めていた高校野球ブラバン応援歌を集めたCD『ブラバン!甲子園』がこの作品にすごく合います。
「ブラバン!甲子園」 - 三軒茶屋 別館
ジャケットは『ブラブラバンバン』を描いた柏木ハルコです。遠くから球児たちの声が聞こえてきそうな爽やかな1枚。こちらも併せてオススメです。
ブラバン!甲子園

ブラバン!甲子園