『さよなら絶望先生』第十二集の表紙は小畑健版『人間失格』表紙のパロだった理由をトレースしてみる

- 作者: 久米田康治
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- 作者: 太宰治
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上記リンク先記事の指摘のとおり、『さよなら絶望先生 第十二集』のカバー絵は小畑健が表紙絵を描いた『人間失格』(集英社文庫)のパロディだと思います。十二集7ページの絶望先生が立ち絵で人間失格を読んでて、かつ、その栞に描かれている絵からもそれは明らかです*1。


(p7より)
これには単なるパロディ以上のちゃんとした意味があります。収録作品中最初の話である「第百十一話 一見の條件」は、敷居を下げて一見さんにも分かりやすい内容にしよう、というお話です。一方、集英社文庫が小畑健の表紙絵の『人間失格』を刊行したのも、若者向けに敷居を下げようという意図が見て取れます*2。そうした狙いの共通性が十二集カバー絵のパロディには表れているのです*3。アニメ第二期が放送されてからの単行本でもありますから、アニメからのポロロッカな一見さんにも手に取ってもらいたいという気持ちはよく分かります。
この小畑絵は久米田センセお気に入りのものらしく、「第百十六話 最後の落葉」で人生のどん底を噛み締めている臼井くんが同じポーズだったりします。

(p81より)
ここまでやっているにもかかわらず、十二集の表紙絵は上記リンク先記事でも指摘されているとおり手のポーズが微妙に違っててパロディとしては不徹底なものになっています。「何たるチキン!」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、これには多分大人の事情があるのです。巻末のオマケ漫画でマ太郎が、「アレがアレシテ」(p160より)とぼかして語っている件がおそらく関係しています。
●http://guideline.livedoor.biz/archives/51011698.html
まあ過ぎたことをあれこれ蒸し返すのも野暮ですが、「きよ彦の夜」が載ってた『マガジンドラゴン』で小畑絵のトレース漫画問題が起きてしまったのです*4。
今回の絶望先生の場合では、上述のとおりちゃんと意味があってのものですし、そっくりそのままのポーズを採用しても別に問題はなかったと思います(よくあるポーズですしトレースしてるわけでもないので)。でも、普段からきわどいネタを扱ってる漫画なだけに慎重になってしまうのもまた分かります。でもでも、結果として不完全なネタになってしまっているのにはちょっと絶望です。ま、絶望先生らしいといえばらしいですけどね(笑)。
*1:こじつけ記だったらごめんなさい(笑)。
*2:実際、敷居を下げた結果、異例の売れ行きを記録したそうです(http://mainichi.jp/enta/mantan/archive/news/2007/08/23/20070823org00m200049000c.html)。
*3:ただし、絶望先生の場合はネタにまみれ過ぎてて逆に敷居が高くなっちゃってるような気もしますが(笑)。
*4:後にデスノートどころか他の様々な漫画からのトレースが明らかになりました(http://news4vip.livedoor.biz/archives/51104593.html)。