『さよなら絶望先生』の魅力

小説の効用・青べか日記 (光文社知恵の森文庫)

小説の効用・青べか日記 (光文社知恵の森文庫)

 『小説の効用・青べか日記』(山本周五郎/光文社知恵の森文庫)は、山本周五郎の数少ないエッセイと日記が収められている本*1です。その中のひとつ、「断片――昭和二十五年のメモより」に次のような一節があります。

○日本人は絶望を知らない。絶望する前に諦観に入ってしまう。
○「絶望」は人間だけが持つことのできる黄金である。同じ意味で「酒」とよく似ている。
○人間は「絶望」し絶望から抜け出るたびに高められる。
○絶望は毒の如く甘い。
(『小説の効用・青べか日記』所収「断片――昭和二十五年のメモより」p81より)

 何だか『さよなら絶望先生』のことを言ってるみたいで、クスリというかニヤリというか、ニャマリ*2としてしまいました。その名の通りにネガティブ思考全開で後ろ向きな漫画なのに、現在16巻まで刊行されてアニメ化もされ、ラジオはいまだに絶好調な絶望先生の魅力を端的に表している一節だと思ったので紹介させていただきました。

さよなら絶望先生(1) (講談社コミックス)

さよなら絶望先生(1) (講談社コミックス)

*1:ちなみに、今回は本書を『さよなら絶望先生』と絡めて紹介してしまいましたが、本来は、本書に収録されている「歴史か小説か」「歴史と文学」「歴史的事実と文学的事実」「小説と事実」といったエッセイを中心に、歴史と文学の関係について考える材料として本書を手に取りました。なので、本書については後日改めて取り上げる予定でおります。興味のある方には一読をオススメしておきます。

*2:さよなら絶望先生』第4巻p96より。