高畠エナガ『Latin』集英社

Latin 高畠エナガ短編集 1 (高畠エナガ短編集) (愛蔵版コミックス)

Latin 高畠エナガ短編集 1 (高畠エナガ短編集) (愛蔵版コミックス)

 高畠エナガによる初作品集です。
 ポンコツアンドロイド「ラテン」と彼女を拾った大学生渡辺くんとの交流を描く表題作「Latin」、妖精とロボットのお話「雪原のネストーレ」、ネコマタが住むアパート「猫又荘」に引っ越すことになった人間・谷町くんと猫又たちのお話「猫又荘の食卓」、人外だらけの学校・私立魔族学園に転校してきた天使・高浜ユリと素直になれない悪魔の黄泉川マリカのお話「reversi」の全4編が収録されています。
 人外ブーム、というわけではないですが、ここ近年、九井諒子『竜の学校は山の上』、村山慶セントールの悩み』など異種族とのコミュニケーションを取り上げる佳品が増えてきました。
 twitterをはじめとするSNSの爆発的な広がりに伴う「コミュニケーションの拡大」は、同時にコミュニケーションの難しさを付加(負荷)する結果となっています。
 もともとコミュニケーションの疎通が難しい異種族感のコミュニケーションを描くことが、すなわち「同じ種族同士」の人間間のコミュニケーションを描くことにつながる、と安易に結論づけるのは早計かもしれませんが、異種族という「はじめからわかりあえない関係」が「わかりあう」課程こそが「わかりあえるはずなのにわかりあえない関係」を逆説的に描いていることも事実だと思います。
 本作品集は、「人間とアンドロイド」「妖精とロボット」「人間と猫又」「天使と悪魔」の4つの関係を描いています。
 作者の描く登場人物たちは皆エネルギッシュで、目に「勢い」があります。

 まっすぐな絵柄で描くまっすぐなお話。
 「わかりあう」という単純な、それでいて非常に困難なたった一つの事柄。
 『latin』で描かれる4つのお話は、そんな困難に立ち向かう4つの物語であり、4つの「希望」を読者に与えてくれます。
 今後もこの作者に注目したくなる、そんな良品でした。
竜の学校は山の上 九井諒子作品集

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セントールの悩み 1 (リュウコミックス)

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