とよ田みのる『CATCH&THROW』小学館

 『ラブロマ』『FRIP FRAP』『友達100人できるかな』など知る人ぞ知る、と言ったらかなり失礼にあたりますが良質な作品を輩出している、とよ田みのるの初短編集です。
 はじめから1つの雑誌で掲載し続けている連作短編などと異なり、掲載誌も題材もバラバラな読切短編集は、バラバラで統一性がなくごった煮であるがゆえに、作者の描きたいテーマが繰り返し繰り返し描かれている気がします。
 つまるところ、読切短編集を読むということはその作者を知ることに他ならないのだと思います。
 とよ田みのる短編集『CATCH&THROW』もまた、作者とよ田みのるのエッセンスが濃縮された一冊です。
 とよ田みのる作品のキーワードはシンプルで、「クールな主人公やヒロイン」に対し「コミュニケーション過多なヒロインや主人公」が必要以上にまとわりつくことにより、クールな主人公やヒロインが心を開き心のうちの「熱さ」を表面に出す、という物語が多いです。
 この「必要以上に」というところがコミカルで、「熱さを表面に出す」ところがベタだけれど感動する、そんな振り幅が非常におもしろいです。
 本作に収録されている5作の短編も、クールとホットの攻守や題材こそ異なるものの「らしさ」が詰め込まれている珠玉の短編集です。
 クールで男性に免疫のないメドゥーサの子孫のお話「素敵な面倒さん」
 表題作にして白眉の「CATCH&THROW」は離島の学校を舞台としたフリスビーを軸としたボーイ・ミーツ・ガールの傑作です。
 同人誌にて発表した「ヒカルちゃん」はやや不気味な雰囲気ながらもテーマの通底を感じます。
 「等価なふたり」は原作が『君と僕のアシアト』よしづきくみちという異色作。
 そしてトリを飾るのはこれまた同人誌収録作の、クールな片桐くんに好きといい続ける地味少女ちゃんのお話「片桐くん」ラブロマの攻守交代、といったところですね。
 描いている内容はベタですが、ユル目の絵柄でクドくならず、だからこそ熱さやベタをきらいもなく詰め込めるのかなぁ、などと感じました。
 とよ田みのるのエッセンスが濃縮された一冊。幅広い方々にお勧めします。
【ご参考】 プチ書評 とよ田みのる『FLIP FLAP』