私家版2012年「このマンガがすごい!」ベスト10
暮れも押し迫りまして、各地で2012年を様々な形で振り返っています。というわけで今年は時流に乗り遅れないよう年明け前に、極私的にフジモリ版「このマンガがすごい!2012」をつらつらと語っていきたいと思います。
ちなみに私家版です。2012年に1巻が発売された本の中から選ばせていただきましたのであしからず。(順位も付けていません)(←ほぼコピペ)
九井諒子『竜のかわいい七つの子』
- 作者: 九井諒子
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2012/10/15
- メディア: コミック
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親と子、地元、家族など「切っても切れない」、「切りたくても切れない」絆というやっかいな存在を「非日常」の世界で軽やかに描く素敵な短編集。
出版が10月だったため各誌の賞レースなどからは漏れていますが、もっともっともっと評価されてもよい作者/作品。今後も年1ペースで作品を出してくれるとうれしいなぁ。
●プチ書評 九井諒子『竜のかわいい七つの子』エンターブレイン
押切蓮介『ハイスコアガール』
ハイスコアガール(1) (ビッグガンガンコミックススーパー)
- 作者: 押切蓮介
- 出版社/メーカー: スクウェア・エニックス
- 発売日: 2012/02/25
- メディア: コミック
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本作、『ハイスコアガール』は少年時代を(初代)ファミコンとともに過ごしたナナロク世代にクリティカルヒットする作品。
「ゲーム好き女子」という童貞オタク少年の妄想を具現化した、まさに「ファンタジー」な物語ですが、読者のノスタルジィをこれでもかこれでもかと刺激する、「この作品がわかる人とは朝までおいしい酒が飲める」一冊です。
●このマンガが好きな人とは美味い酒が飲めそうだ。 押切蓮介『ハイスコアガール』
甲斐谷忍『ウイナーズサークルへようこそ』
ウイナーズサークルへようこそ 1 (ヤングジャンプコミックス)
- 作者: 甲斐谷忍
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2012/04/10
- メディア: コミック
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『ONE OUT』『ライアーゲーム』などギャンブルや心理戦を描くのが巧みな作者による競馬マンガ。
これまでの競馬マンガといえば、レースを中心とした「競争馬」や「騎手」を描くものがほとんどだっただけに、「ギャンブル」という意味での「競馬」を題材とするのは新鮮です。作者が名馬好きということもあり、「ギャンブル」だけでなく「ブラッドスポーツというロマン」という側面をきっちり描いているところも好感がもてます。
まあ、実際の馬券購入には活かせないんですけどね!(逆ギレ)
●プチ「馬券師」たちの漫画。 甲斐谷忍『ウイナーズサークルへようこそ』
カレー沢薫『アンモラル・カスタマイズZ』
- 作者: カレー沢薫
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2012/12/06
- メディア: コミック
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作者の底なしのネガティブさに裏付けられたセンスのある「毒」は、クセがありますがクセになります。
●痛快な毒々しさ カレー沢薫『アンモラル・カスタマイズZ』
みずしな孝之『いとしのムーコ』
- 作者: みずしな孝之
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/04/23
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基本的に柴犬ムーコとガラス職人こまつさんの日常を描くだけのマンガなのですが、ムーコの適度なバカさ加減が非常に愛らしい。犬を飼っている人ならメロメロになること請け合いの一冊です。
●プチ書評 みずしな孝之『いとしのムーコ』講談社
道満清明『ニッケルオデオン』
- 作者: 道満晴明
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/01/30
- メディア: コミック
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日常と少しズレた世界で繰り広げられる、日常と少し(かなり?)ズレた人々のお話。
書評でも書きましたが、星新一のショートショート、あるいは藤子不二雄のSF短編を読んでいるかのようなクオリティです。
●プチ書評 道満晴明 『ニッケルオデオン 赤』 IKKICOMIX
大須賀めぐみ『VANILLA FICTION』
VANILLA FICTION 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
- 作者: 大須賀めぐみ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/12/12
- メディア: コミック
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長編マンガというのは打ち切りとの戦いでもあり、尻つぼみになるリスクと紙一重ですので1巻の時点でプッシュすることはなかなか難しいのですが、「先が読めない」スリリングさと、仄かに流れる「伊坂幸太郎イズム」を評価してベスト10入りさせました。
このテンションがどうなっていくのか、非常に楽しみです。(小並感)
穂積『式の前日』
- 作者: 穂積
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/09/10
- メディア: コミック
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さまざまな「二人」を描く6編の短編集ですが、書評でも描いたとおりミステリ作家「加納朋子」を彷彿とさせます。昔、フジモリの書評で「加納朋子の半分は優しさでできている」*1と称しましたが、この作品にも同様の雰囲気を感じ取りました。
●プチ書評 穂積『式の前日』小学館フラワーコミックス
黒咲練導『放課後プレイR』
放課後プレイR (電撃コミックス EX 電撃4コマコレクション 127-4)
- 作者: 黒咲練導
- 出版社/メーカー: アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2012/03/27
- メディア: コミック
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ゲーマーカップルのイチャイチャを描く4コマ『放課後プレイ』の番外編で、なんとこれまでのキャラが一堂に会してTRPG(しかもオリジナル!)をやるというまさに俺得以上でも以下でもない4コママンガ。
この「わかる人だけついてこい」というトガリっぷりが最高です。
●「放課後プレイ」+「TRPG」=「俺得の極み」 黒咲練導『放課後プレイR』
ひらりん『のろい屋姉妹 ヨヨとネネ』
- 作者: ひらりん
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2012/01/13
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本作はフジモリが絶賛した『のろいや姉妹』の前日譚にあたります。
「歴史」という縦軸と「世界(国々、文化)」という横軸それぞれにしっかりと構築された「設定」があり、またその世界の中でキャラクタたちが重なりあうことでしっかりと「物語」が生まれています。
まさに、「物語、かくあるべし」という作品です。
●物語世界を満喫できる傑作・再び ひらりん『のろい屋姉妹 ヨヨとネネ 上』
今年はマンガが豊作すぎて、ベスト10を絞り込むのにだいぶ苦労しました。
森繁拓真『いいなりゴハン』、とよ田みのる『タケヲちゃん物怪録』、森薫『森薫拾遺集』、亀井薄雪『桃栗三年』、水上悟志『スピリットサークル』、高畠エナガ『Latin』などなど、ベスト20でも30でも挙げれそうなほど良作が多く、個人的にも大満足な一年でした。
一方で、惜しまれつつ大団円を迎えたマンガも多かったです。『さよなら絶望先生』『バクマン。』*2など、当blogでもおなじみの作品たちが見事に風呂敷をたたみきりました。
また、既存の作品、『ジョジョリオン』『ちはやふる』『3月のライオン』なども「え?さらに伸び代があるの??」というぐらい、昨年よりも更に更に盛り上がっていました。
昨年の大震災を経て、「描き手」もまた「描き続けよう」とする強い「意志」と「エネルギー」を作品に込めているかのような印象を受けました。
来年もまた、「読み手」として少しでも感謝と応援が発信できる1年になればと思っています。
2013年も読み手の皆様に新たな本との出会いと新たな発見がありますように。