オタクとは業の深き生き物なり。 はるな檸檬『ZUCCA×ZUCA(ヅッカヅカ)』
- 作者: はるな檸檬
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/07/22
- メディア: コミック
- クリック: 72回
- この商品を含むブログ (35件) を見る
オタクたちの日常を描くマンガといえば『らき☆すた』をはじめ、『となりの801ちゃん』(腐女子)、『今日の早川さん』(ビブリオマニア)、やや濃いところで『以下略』など多々ありますが、いわゆる「オタクコンテンツ」*1にハマるオタクたちの悲哀や「あるある」を小気味よく抉りクスリとした笑いに結びつける作風が主流だと思います。
この『ZUCCA×ZUCA』もまた、オタクの「あるある」を描いているのですが、その対象が「宝塚」というおそらくフジモリが一生接点がないかもしれない世界です。
宝塚を聖地と仰ぎ阪急電車に憧れる。
手帳にはびっしりと公演予定が書かれ、勤務中に歌が頭をよぎると思わずトイレに駆け込み歌い踊ってしまう。
全く違う世界を覗いているようでもあり、オタク特有の行動に思わず「あるある」とうなずいてしまったりもする、なんともいえない面白さがあります。
近くて遠き隣人とはよく言ったもので、対象が異なっても「オタク」の根っこは同じなんだな、と感じてしまいます。対象に対する「愛」。そして「愛」あるゆえに一般から「行き過ぎてしまう」オタクの業の深さを、笑いと悲哀の絶妙な距離感を持って描いています。
絵のタッチもデフォルメとリアルの描きわけが巧く、また柔らかな配色で好みな絵柄です。
自分の知らないオタクの世界を新鮮さを持って垣間見ながらも、どこか共感をもってしまう、それでいて思わず笑ってしまう、奇妙で面白いマンガ。あまねく「オタク」にオススメの一冊です。