『あずまんが大王 2年生』あずまきよひこの「こだわり」
あずまんが大王 2年生 (少年サンデーコミックススペシャル)
- 作者: あずまきよひこ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2009/07/17
- メディア: コミック
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前半にほぼ手が加えられていた1年生と異なり、2年生はトーンのみの変更が7割強と絵柄の修正はあまりありませんでした。*1
逆に「どこを修正するのか?」に、作者あずまきよひこの「こだわり」があるような気がします。
今回は『あずまんが大王 2年生』の修正箇所をピックアップしながら、あずまきよひこの「こだわり」について考察してみたいと思います。
視線
まず気付いたのが2年生からレギュラー化した神楽と、榊との「身長の対比」です。
神楽がスポーツ得意でおっぱいが大きいので背が高いように思えますが、156cm*2と、ともや大阪とほぼ同身長。
これが無印では
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となっていましたが、新装版では
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と二人の身長を対比する構図となっています。*5
新装版では、身長差による「視線」がわかりやすくなっており、例えば特別編「大阪の半日」においても*6
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と「下」を向く視線になっています。
細かいところでは4月のクラス替えのときに「私 あらへんー」とつぶやく大阪に対し
*8
無印では大阪の方を見ているちよちゃんですが、
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新装版では同じく掲示板を見ています。
『あずまんが大王 1年生』で「目」の修正について触れましたが、目を修正しシンプルにすることで「視線」を意識したカメラワークになっているのかな、と思いました。
髪
後日2年生の比較表をアップしますが、新装版では一貫して「髪をベタに」しています。
これは「口のトーンをとる」のと同じく新装版での一貫した修正事項なのですが、実は無印でも3巻から髪が全てベタになっています。
連載時のときを知らないので断言はできませんが、巻が変わって明らかに表現を変更したということから、何らかの作者の意図が感じられます。
無印2巻おわりの髪。
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無印3巻はじめの髪。
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『よつばと!』では再び髪のツヤ表現を戻していますので、
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『あずまんが大王』としてのこだわりがあるのではと考えます。
水着
今回の修正の目玉は水着シーンです。*13
こればっかりは実際に購入して確かめて欲しいのですが、授業の水着シーンは全て描き直しされています。おまけに神楽はスクール水着ではなく部活で使用している(と思われる)競泳水着。
*14
にゃも先生も柄ありの水着と、なんという気合の入れよう!
ここにもあずまきよひこの「こだわり」を見た気がします。あずま。。。恐ろしい子。。。
というわけで最後はこの画像に対して、
*15
この画像でツッコんで終わります。
*16
『あずまんが大王 2年生』は、『1年生』の大幅修正に比べるとインパクトに欠ける気がしますが、逆に「どこを修正したか」で現在のあずまきよひこが表現上どこに焦点をおいているか、どこにこだわっているかを推測する、という楽しみ方ができました。
だいぶ絵も『よつばと!』の頃に近づき、さっと読み流すだけでは修正箇所を見逃してしまうこともあるかもしれません。
しかしながら、あずまきよひこが『あずまんが大王』から『よつばと!』に向かう「経過」を目の当たりにできるまたとない資料でもあるかと思います。
まあ、深いこと考えず読んで笑ってというのが一番ですが、こういった細かい修正で更に再読性に耐えられる一冊になっているのも事実です。
何回も何回も読み直す中で、今回の記事のような「こだわり」を意識して読むのも面白いかと思います。
【ご参考】
●あずまきよひこの出した「応用問題」(前編) - 三軒茶屋 別館
●あずまきよひこの出した「応用問題」(後編) - 三軒茶屋 別館
●『あずまんが大王 1年生』新旧比較表 - 三軒茶屋 別館