安倍吉俊『リューシカ・リューシカ』スクウェア・エニックス

リューシカ・リューシカ 1 (ガンガンコミックスONLINE)

リューシカ・リューシカ 1 (ガンガンコミックスONLINE)

アニメ『lain』や『ニアアンダーセブン』などのキャラクターデザインを担当し、同名のコミカライズなどを行っているイラストレーター、安倍吉俊による待望の新作です。
ガンガンオンラインで連載されているweb漫画なのですが、フルカラーで作者の独特の色使いをたっぷりと堪能することができます。
リューシカという空想癖のある女の子が、だるまと遊んだり、ラーメンを食べたり、夜中に起きたりと様々な日常を体験する中で、空想による「リューシカの見る世界」を描くお話です。
「子供による日常」という意味ではあずまきよひこよつばと!』を彷彿とさせるのですが、『よつばと!』とは本質的に異なっているなぁ、というのが直観的な感想です。
よつばと!』が主人公・よつばの視点を極力廃しているのに対し、『リューシカ・リューシカ』では基本的に主人公・リューシカの視点から世界が描かれています。
たとえば、台風が去った後の庭を見て、大きな巨人がいると空想するリューシカ。

おそらく(ひょっとしたら)よつばもこんな風に世界を見ているのかもしれませんが、『よつばと!』ではよつばの「世界」が描かれることはありません。
あくまでリューシカの目から見た、リューシカの世界。
そしてそれは大人には見ることはできませんが、かつて子供だった「私たち」が一度はみたであろう、空想したであろう世界。

リューシカ・リューシカ』もまた、別な角度から「かつて、子供だった私たち」に対する物語を描いているのです。
また、『リューシカ・リューシカ』では基本的に大人たちがリューシカに対し冷静です。

よつばと!』でよつばが「つくつくぼーしは蝉でした」と言った際の

のような切り返しは、この漫画では期待できません(笑)。
しかし、だからこそ、『よつばと!』よりもリアルで、『よつばと!』よりも空想的な、全く異なりながらも同一の世界を描けているのだと思います。
安倍吉俊の美麗な絵を拝めるだけでも満足なのですが、漫画そのものもまた彼の絵柄にうまく合った「すこし・ふしぎ」な内容だと思います。
【ご参考】作者のサイト http://homepage.mac.com/abworks/
よつばと! (1) (電撃コミックス)

よつばと! (1) (電撃コミックス)