手代木版は魚座が大活躍! 『聖闘士星矢 THE LOST CANVAS 冥王神話 3巻』
聖闘士星矢THE LOST CANVAS冥王神話 3 (少年チャンピオン・コミックス)
- 作者: 車田正美,手代木史織
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2007/05/08
- メディア: コミック
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(以下、相変わらずの既読者限定な駄文。)
車田版聖闘士星矢では、黄金聖闘士は主人公である青銅聖闘士たちの乗り越えるべき壁でしたから、強くてカッコよくさえあれば良かったわけで、人間的な葛藤とかのドラマは主として青銅聖闘士側の成長物語として描かれていました。ところが、手代木版聖矢は聖闘士たちによる冥王軍との戦いなので、黄金聖闘士側からの物語も描かれることになります。最初は弱くても構わない青銅聖闘士であれば、弱さを乗り越えて強くなる、といった成長していく過程の物語で人間的な弱さを描くこと・掘り下げができますが、黄金聖闘士は最初から強くあることが存在意義となってます。そんな彼らの内面を掘り下げようとすると、弱さを乗り越えての強さではなくて、強くあることと同時に弱さ・影の部分をも併せ持った存在として描かれることが必要になります。しかも、車田版の正史を踏まえますと、黄金聖闘士のシオンと童虎を除く10名は必ず死ぬことになってます。そうした厳しい制約がありますので、黄金聖闘士を描くのは本当に大変なはずなのですが、その1番手としての魚座の描き方は見事の一言に尽きます。これまで星座の話題になると必ず肩身の狭い思いを強いられることになった魚座ですが、これでその印象はガラリと変わることになるでしょう。……メジャーになればですが。
超絶美形の毒薔薇使いというアクの強い設定に加えて車田版ではどうしようもないヘタレキャラだった魚座ですが、良いところだけとって最高の形に加工することに成功しました。魚座が主人公じゃないかなどという錯覚は車田版だとまったく想像できませんが、実際私も同感で、このまま主人公でいいんじゃね? と思ってました。「薔薇の陣をいつ敷いた? その薔薇はどこから出した?」といった疑問はとるに足らない些細なことです。自らの体内に流れる血も猛毒、ということで毒薔薇の技に説得力を持たせていると同時にオリジナル技も追加して、さらに孤高という魅力的なキャラ造形にも成功しています。美形だけど孤高というのがポイント高いですね。村娘からすれば、ちょっとデレられたらと思ったら後はひたすらツンツンされて、そのまま最期を迎えちゃうんですから酷い話です。だったらデレるなよ、って話ですが、だがそこがいいわけです。死が約束されてないとできないキャラ造形ですし、あざといと言えばあざといのですが、でも切ないですね。ちょっとしたデレも、残りの頑ななまでのツンも、どっちも優しさの表れなのですから。最期のセリフなんてなかなか言わせられるもんじゃないですよ。
このクオリティで残り9人を死なせていくのであれば、かなりの傑作になると思われます。言い方は悪いですが、死亡フラグの見本市、キャラの死なせ方の格好の教科書になり得るのではないでしょうか。テンマやサーシャやアローンといった主要キャラ、あるいは生き残ることが約束されている黄金聖闘士(シオンと童虎)の物語は、他の黄金聖闘士たちの死に様を読者に見せるためのナビゲーターとしての機能さえ果たせば良いと思います(いや、面白いに越したことはないのですが)。単行本にして1巻にも満たない短い話数で黄金聖闘士を一人の人間として描いて活躍させて、そしてカッコよく死なせるということを繰り返さなければならないのですから、相当な難事業だと思います。こうなると蟹座の扱いはwktkですし、何気にイロモノな双子座も気になります。黄金聖闘士の死なせ方が決まるまでは主人公たちの話でお茶を濁し準備が出来たら黄金聖闘士を登場させるようにすれば良いと思います。ってか、今週号ではついに私の星座に死亡フラグが……。