過去記事の再利用としての批評
上記のフジモリの記事に便乗して雑文を少々。
個人サイトの多くがblogとなっている現状にあって、書評系サイトの多くもblogへと移行しています。その結果、1日に1冊の本について書評を書くのが書評系サイトの標準的な更新パターンになっているものと思われます。それに併せて、複数の本を考察の題材とする批評は相対的に減少しているように感じます。
書評と批評の区別は微妙なところがあると思いますが*1、本記事中では、
本の読みどころをわかりやすく紹介する。商品説明+コメント。ブックガイド。短文。――大ざっぱな一般論として、“書評”はそんなイメージを持たれている。
それに対し“批評”は、作品の歴史的位置づけや社会的背景、ジャンル内での意味、構造分析などなど、本という商品の直接的な内容説明、紹介から離れた部分に力点がある。長文。――早い話が、普通の世間からはめんどくさいと思われ、もの好きだけが読むものとみられている。そして、現在、批評は出版されにくい環境にある。
(2008-10-18 - ENDING ENDLESS 雑記帖 @『ディズニーの隣の風景』 by 円堂都司昭より)
というような区別と問題意識に沿った形で書評と批評について考えていきたいと思います。
上記引用記事では批評の出版されにくい環境が考察の対象になっていますが、書評系サイトにおいても同じようなことがいえると思います。もっとも、その理由は明らかです。1日1回の更新がベターとされるblogの更新において、複数の本を読んでまとめて長文を書くのは面倒で大変で、おまけにアクセスもたいして見込めないからです(笑)*2。
とはいえ、だからといって批評を書くのを諦める必要はないと思うのです。そこで私が提案したいのが、過去に書いた書評を再利用して批評を書くこと。もしくは、予め批評に用いることを前提とした書評を書いていくことです。
例えば、手前味噌になりますが、私は昨年ミステリと民主主義という記事を書きました。この記事を書く前に何冊かの本を読んで書評しているわけですが、これらの書評は予め批評記事を書くことを目的とした上でのストックという意味合いも持っていました。つまり、批評として再利用することを計算ずくで書評を書いてたわけです。
もっとも、何も最初から批評を書く目的で書評を書く必要もありません。日々生活している中で自分が過去に書評として書いてきたことにピンと来るようなことがあったら、それを無理やりにでも結び付けて批評にしてしまうのもひとつの手です。ぶっちゃけ、私的には常套手段です(笑)。
こうしたことによってどのような効果が得られるかといえば、1回分の更新ネタを楽に仕入れることができます(笑)。加えて、1日1書評という更新を続けていきますと、どんなに面白い本に出会ったとしても読み捨てのような形で日々の更新の中に埋没してしまいがちです。そうした場合にも、批評という違った形で再度紹介し直すことができるのです。逆にいえば、傑作を再度紹介するために批評のネタを探したり作ったりするというのも全然ありでしょう。
ネタ系にとっては厳しい時代になるでしょう。なにせジャンルについて考察するとか、そのジャンルのパロディを書くとかいうのは、おぼろげにでもジャンル全体を把握しているからこそできるもの。カバーしている範囲が狭いと、ネタを考えるのも一苦労だわ、詳しい人から突っ込まれるわで、かなり難易度が上がってしまいます。
(膨張するライトノベル市場にラノベブロガーはどう立ち向かうべきか - WINDBIRDより)
というような見解にも頷けないではないですが*3、そんなに難しく考える必要もないと思うのです。もちろん、ネタや切り口によっては異論反論を覚悟しなくてはなりませんが、でも、批評なんて反論可能性の余地があって当たり前でしょう。
というわけで、結局は私がいろんな批評を読みたいというだけの話なのですが(笑)、みんなもっと気楽に批評を書けばいいと思いますですよ。
*1:字面どおりに、本の批評=書評という認識が一般的でしょうか?
*2:とはいうものの、当サイトの場合ですと、ネタによってはニュースサイトさん、特にカトゆー家断絶さんに補足されて結構なアクセスが集まる場合があります(特にラノベ関連)。なので、批評にもそれなりに書き甲斐を感じている一方で緊張感も持っています。
*3:ちなみに、本リンク先記事について若干の雑感を述べますと、”書評系”じゃなくて”感想系”なのがラノベ界隈ならではなのかなぁと(参考:日本には書評文化が根づいていないのか)。それと、確かにニュース系のラノベブログはありませんね。公式情報なら気が向いたらのライトノベル週報さんがありますけど、それ以外のネタ系の情報だとカトゆー家断絶さんが頼りなのが現状でしょうか。もっとも、個人的にはラノベよりミステリのニュースサイトが欲しいですが。それにしても、よくいわれることではありますが、カトゆーさんはどうやってネタを収集して、どうやって睡眠時間を確保しているんでしょうね。謎です(笑)。