『月に吠えろ! 萩原朔太郎の事件簿』(鯨統一郎/徳間文庫)

 詩人として知られる萩原朔太郎を主人公とした七話の短編連作ミステリ集です。各話のオチが朔太郎の詩に結び付けられているので、朔太郎の詩に詳しい方には楽しめるのかも知れません。
 しかし、正直不満が残りました。せっかく萩原朔太郎を主人公としているのですから、詩と小説の違い、一般小説と推理小説の違いといった文学的ウンチクが、これでもかこれでもかというくらいに嫌味ったらしく論じられてるのを期待するのが普通じゃないですか(?)。それなのに、そういう議論はまったくありません。これにはガッカリです。作中には関東大震災時に何かあったことが仄めかされていて、ひょっとしたら長編の構想もあってそっちの方に持ち越しなのかも知れませんが、それにしても残念でした。

月に吠えろ!―萩原朔太郎の事件簿 (徳間文庫)

月に吠えろ!―萩原朔太郎の事件簿 (徳間文庫)