施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』REXコミックス

図書館を舞台とした、ダベリ系プチサークル漫画(←フジモリ命名)です。

自らを「バーナード嬢」と呼ばせ読書家キャラを作っている女子高生・町田さわ子と、彼女を「ド嬢」と心の中で称し突っ込みを入れまくる遠藤君。
彼女たち二人を中心に、図書館で名言や本を肴にだべっていくだけの漫画なのですが、非常に面白かったです。
先ほど書きましたが、主人公は読書家ではなく読書家を気取る、いわゆる「ファッション読書家」キャラ。知ったかぶって名言を吐く、一歩間違えるとウザキャラなのですが、これがまたウザさと笑いの絶妙な中間をついていきます。

いわば、ほぼ全編「中途半端読書家あるある」によって進められていくのです。
著名なSF小説のオチだけ先に読もうとしたり、映画化の後に原作を読みはじめると負けた気がしたりと、なんというか暗黒面のフォースに身をやつしてしまうと思わずやったり思ったりしてしまう「あるある」が満載なんですよね。
彼女(ド嬢)の面白さは、一般人である遠藤君の突っ込みによって引き出されます。
それだけでも面白いのですが、途中から登場する「本当の読書家」キャラや「ウザいぐらいのガチSFファン」によってさらに笑いが増大します。
本当の読書家キャラの図書委員・長谷川スミカは人と話すとキョドってしまうし、ガチSFファンの神林さんは「SF語るなら最低千冊」とお約束のお言葉をのたまいます。
常識人である遠藤君を軸に、マニアすぎてめんどくさい上に振り切れた読書家と、読んでいないのに読書家アピールするめんどくさい下に振り切れた読書家を同時に登場させることで見事に笑いの幅を広げています。
絵柄も流行の画風からは一線外れ、読む側を不安にさせるようなヘタウマ感が作風と見事にマッチしています。
なんとなく共感できてなんとなくクスクスわらってしまう、それでいてつい再読したくなってしまう、そんな面白さを秘めた作品です。
あえて、読書家ぞろい(だと思われる)の当blogのご来訪者様方におすすめしたい一冊です。