ほほえましき「イケてなさ」 青色イリコ『ハナチュウ』

ハナチュウ (ゼロコミックス)

ハナチュウ (ゼロコミックス)

 公立中学校に通う仲良し4人組のあづさ、梢、ヒナ、万里子。
 服は量販デパート。駅前のおしゃれな服屋に行くことは大イベント。
 同じクラスのイケてる女子たちがトイレにたむろっていたら用を足すふりをし、階段を上って上級生のフロアに行くことは一大事。
 そんなダサくて地味でイケてない女子グループの日常を描く、ほのぼのギャグ漫画です。
 「サザエさん」から脈々と流れている「日常系」というジャンル、楽しみ方は人ぞれぞれだと思います。
 登場人物たちの行動の「あるある」を楽しむ「共感型」、キャラクタたちのダベリや行動を眺めて楽しむ「箱庭鑑賞型」、最近では、「日常」そのものが貴重であるという「回帰型」という楽しみ方もあるかと思います。
 本作、『ハナチュウ』もまた、「地味グループあるある」、というよりも「田舎の公立中学校あるある」として楽しむことができました。
 もちろん、世代も違いますので体育の授業に創作ダンスなんかありませんでしたし、しまむらとかオシャレな服屋もありませんでしたから厳密な「あるある」ではありませんが、なんというか、「地味でイケてない日陰のグループ」というところにシンパシーを感じてグッときてしまいます(笑)。



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 そうなんですよー。コミュ能力のあるイケてるグループは眩しすぎるんすよー。
 地味でイケてない女子、というと谷川ニコ私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(以下:わたモテ)』を思い浮かべてしまいますが、あの作品ほどは「あるあるを突き抜けた痛さ」はありませんし、ほほえましい「イケてなさ」です。
プチ書評 『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!(1)』(谷川ニコ/ガンガンコミックスONLINE)三軒茶屋別館
 なにせ、「イケてる」グループですら、もっさい格好をしている、「さすが公立中学校!」というなんとも良い感じの平均値(←偏見)。
 そしてまた、「グループ」というのがまた良いのかもしれません。
 「わたモテ」があまりにも痛々しいのは「痛さ」に対しツッコミをして毒を中和する「友人」がいないから、という理由もあるかと思います。
 『ハナチュウ』ではイケてない同士がささいな「イケてなさ」を恥じつつ、互いに突っ込みを入れたり一緒にバカなことをして盛り上がったりします。
 そういう意味では、「イケてない学校生活」そのものを楽しんでいるかのような若さ、エネルギーを感じてしまいます。
 イケてない女子中学生グループの日常を描くまさに「なにもおこらない」日常漫画ですが、「イケてないあるある」としても「ダベリ(日常)の箱庭鑑賞」としても楽しめる一冊でした。
【作者HP】GOTTSU SHIROKUMA.
【作者twitter青色イリコ(@iro_iro_man)

*1:p20-23